六つの白い包み

梢が父の家で炊飯器を開けると、湯気の向こうに三合のご飯が光っていた。

二十七歳の誕生日に何をしたいか聞かれ、父の達雄の冷凍庫を埋めたい、と答えた。父は不満そうだった。祝う日なのに家事をするなと言い、寿司を取ると言い、最後には「まだ先のことみたいにするな」と言いかけて黙った。

梢はしゃもじを水で濡らした。

余命の数字は、家の中では使わないことにしている。けれど父は、鍋いっぱいのカレーを三日食べ続ける人だ。炊飯器の保温を二日切り忘れる。梢が通院の帰りに寄れなくなってから、冷蔵庫には卵と漬物しかない日が増えた。

冷凍庫を開けると、いつ買ったのか分からない保冷剤と、霜のついた枝豆が場所を取っていた。梢は賞味期限を調べる代わりに、上段だけを空にした。父が自分で捨てるかどうかを決めればいい。今日の用事は、片づけではなく、ご飯を六つ作ることだった。

ラップを六枚、同じくらいの大きさに切って並べる。湯気が逃げないうちに、一膳分ずつ置く。

「そんなに平たくするのか」

「早く凍るから」

「丸いほうが茶碗っぽい」

「解凍したら茶碗に入れて」

達雄は口をつぐみ、食卓の椅子に座った。紙袋から誕生日用のどら焼きを出し、まだ食べるなと自分に言い聞かせるように戻した。

梢は一つ目を包んだ。左右を折り、手前から巻く。二つ目も同じ。三つ目は少し多くなったので、しゃもじでひと口ぶん戻した。

白い包みが増えるたび、炊飯器の中は浅くなる。梢は自分の食欲が落ちてから、食べ物を量るのがうまくなった。多すぎる一口、飲み込める一口、今日は無理な一口。父の一膳は、それよりずっと簡単だった。

四つ目を包むと手首がだるくなった。達雄が無言でラップを切り、次の一枚を差し出す。端が斜めだったが、梢は直さない。

五つ目。六つ目。

油性ペンで日付を書く。誕生日の日付が六つ並ぶのを見て、達雄が窓のほうを向いた。梢は「一か月以内」とだけ書き足した。説明はそれで足りる。

包みを金属トレーに並べ、冷凍庫の上段を空ける。アイスの箱を横へ寄せると、六つがぴたりと収まった。

梢は冷凍庫の引き出しを閉めた。