写真の外側

雨宮小春は、同窓会の案内に載せる卒業写真を頼まれ、実家のアルバムを開いた。公式写真の右端で、制服の肩が半分だけ切れている。それが小春だった。

高校最後の半年、小春は教室でほとんど口をきかなかった。仲のよかった菫と、進路を巡って大喧嘩をしたからだ。「東京へ行く人には分からない」と言った小春に、菫は「残る人の気持ちを盾にしないで」と返した。どちらも謝らないまま卒業式になった。

式後、担任が校舎前に全員を並べた。小春は一番端を選んだ。カメラマンが「もう少し中へ」と手招きしても動かなかった。写真に残れば、ここにいた証明になる。けれど中央へ入るのは、何かを許したふりに思えた。

シャッターが切られる直前、菫が列から抜けた。

小春の隣まで来ると、何も言わず、さらに外側へ立った。カメラマンが困って「そこ、写りませんよ」と叫んだ。

「じゃあ、私のカメラで撮ります」

菫は通りかかった後輩へ使い捨てカメラを渡した。公式写真のフラッシュが光ったあと、少し遅れて、もう一度小さな光が弾けた。

現像された私写真には、校舎もクラスメートも半分しか入っていない。小春と菫は写真の端で、互いに反対方向を向いていた。それでも二人の肩だけは触れていた。

春から二人は別の町で暮らし、仲直りには数年かかった。最初の連絡は、菫が送ってきた空の写真だった。小春も返事の代わりに、通勤路の川を撮って送った。会話らしい会話が戻るまで、さらに一年かかった。

あの日の一枚が関係を救ったわけではない。写真があるから許せたのでもない。むしろ、近くに立てても同じ方を向けない時期があり、それでも同じ光の中にいた瞬間は消えないと、あとで知るための写真だった。

小春は同窓会係へ公式写真を送ろうとして、手を止めた。スキャナーに私写真を置き直す。端の白い余白も、フィルムの傷も、切り取らずに読み込んだ。

《こっちを使ってください。全員は写っていないけれど、あの日の私たちは写っています》

送信後、小春はアルバムを閉じた。写真の中央へ戻る必要はない。外側から始まった自分の道も、もう誰かに切り取らせなくていい。