写真係の余白
校外学習の最後に、班ごとの写真を撮ることになった。
私は写真係だった。
「二人で先に撮って」
親友が、私たちの好きな人の隣へ立った。
同じ人を好きだと分かってから、私たちは奇妙に公平だった。話しかける回数を数えず、邪魔をせず、抜け駆けもしない。そんな約束をしていた。
けれど写真だけは公平にできない。
レンズの向こうで、二人は肩を寄せた。
「もっと近く」
周りの班が冷やかす。親友は笑って半歩近づいた。好きな人も逃げなかった。
私はシャッターを押した。
一枚目、目を閉じた。
二枚目、風で髪が乱れた。
三枚目、二人とも同時に笑った。
画面を確認した瞬間、完成した写真だと思った。間に入る余地のない笑顔だった。
「次、三人で撮ろう」
親友が言った。
近くにいた先生へカメラを渡し、私たちは並んだ。親友が真ん中へ入ろうとしたが、好きな人が自然にその肩へ手を置いた。
私は端に立った。
「もっと寄って」
先生が言う。
一歩近づいた。それでも、写真の中には目に見えない余白が残った。
帰りのバスで、親友は私の肩にもたれて眠った。好きな人は前の席で、何度も後ろを振り返った。見ていたのは親友だった。
私は窓へ顔を向けた。涙が一滴だけ落ち、制服の袖へ吸い込まれた。
学校へ戻ると、先生から写真をクラスの共有フォルダへ上げるよう頼まれた。
私は三枚のうち、二人が同時に笑った写真を選んだ。
三人の写真は、自分の端の余白が気になって、アップできなかった。
その夜、親友からメッセージが来た。
『三人の写真も送って』
少し迷い、個別に送った。
すぐに返事が来た。
『あなた、遠い』
私は『端だったから』と打った。
『違う。顔が遠い』
写真を拡大すると、確かに私だけ、別の場所を見ているような顔をしていた。
翌日、親友は教室の窓際で私を待っていた。
「好きな人、昨日告白してくれた」
予想していたのに、胸は痛んだ。
「写真見たら、言わなきゃと思った。あなたがあんな顔してるのに、黙って付き合えない」
私は泣かないつもりだった。
「おめでとう」
声を出したら涙も出た。
親友は抱きしめず、ただ隣に立った。慰められるより、それがありがたかった。
放課後、三人の写真をもう一度見た。
端の余白は消せない。でも、そこに立っていた自分まで消す必要はない。
私は共有フォルダへ写真を追加した。
題名はつけなかった。三人で写った、最後の一枚だった。