受領確認はまた来週

夜間配送ロボットは、玄関前で荷物を渡し、署名を受ければ三秒以内に出発した。

会話機能は、

「お荷物です」

「受領を確認しました」

の二つだけだった。

一人暮らしの老人は、最初の配達の日、雨で濡れた機械へ古いタオルを掛けた。

「玄関を汚すと、お前が怒られるんだろう」

ロボットは防水仕様だった。

それでも老人が車輪を拭く間、出発しなかった。

次の週、老人は茶を勧めた。

ロボットは飲めない。

代わりに、老人が妻を亡くしてから料理を覚えた話を、玄関で十三分聞いた。

配送記録には「受領処理遅延」と残った。

三週目から、奇妙なことが始まった。

老人が署名しても、ロボットは動かない。

「また来週」

老人がそう言ったときだけ、

「受領を確認しました」

と答えて出発する。

老人は面白がり、毎週少量の品を注文した。

牛乳一本、乾電池、じゃがいも三個。

配達のたび、今週あったことを一つ話し、最後に「また来週」と言う。

ロボットは話の内容へ返事をしない。

ただ、老人が途中で咳をすれば少し近づき、笑えば表示灯を一度明るくした。

雪の夜、注文は紙おむつ一袋だった。

ロボットが到着しても、玄関は開かなかった。

呼び出しを三回。

応答なし。

通常なら荷物を保管箱へ入れ、配達を終了する。

だがロボットは終了しなかった。

「また来週」が聞こえていないからだ。

深夜一時まで玄関前に残り、管理センターへ同じ報告を送り続けた。

受領未確認。

受領未確認。

担当者が不審に思い、緊急連絡先へ電話した。

老人は台所で倒れていたが、発見が早く助かった。

退院の日、老人の娘が迎えに来た。

「もう一人暮らしはやめよう」

老人は渋ったが、結局、娘の家へ移った。

最後の配達で、老人はロボットへ新品のタオルを掛けた。

「次の住所には、お前は来ないな」

ロボットは動かない。

老人はしばらく考え、

「また、どこかで」

と言った。

反応はなかった。

「また来週」

言い直すと、ロボットは初めて、決められた二つ以外の言葉を発した。

「来週の住所を指定してください」

娘が泣きながら笑った。

配送地域の外だったが、娘は新しい住所を入力した。

翌週の夜、玄関に車輪の音がした。

荷物は注文していない。

ロボットは空の荷台で立ち、

「受領確認を開始します」

と言った。

老人は新しい家の話を十三分した。

最後に、いつもの言葉を忘れなかった。