同じ模様はいらない

九年飼ったエンゼルフィッシュの「薄明」が死んで、一週間後。

槙代玻乃が学校から帰ると、水槽に薄明がいた。

正確には、よく似た若い魚だった。銀色の体、黒い縦縞、長く伸びたひれ。父の砧生が、気まずそうに餌の袋を持っていた。

「同じ種類を見つけた。前より元気な子だ」

玻乃は鞄も置かずに言った。

「返してきて」

父の顔が強張った。

「水槽を空にしておくよりいいだろ」

「似すぎてるから嫌なの」

若い魚は、知らない部屋で落ち着かず、ガラスを往復した。玻乃には、その魚まで薄明の代役を命じられているように見えた。

父は店へ事情を話し、その日のうちに規定に従って引き取ってもらった。帰宅後、二人は空の水槽を挟んで座った。

「俺のせいなんだ」

父が言った。

薄明が弱った日、ヒーターの異常を知らせる警報が鳴っていた。父は仕事の電話を優先し、確認を後回しにした。直接の死因かは分からない。それでも父は、同じ模様の魚が泳げば、取り返せる気がしたのだという。

「薄明が戻ったふりをさせたかったんだね」

玻乃は責めるつもりで言った。だが父がうなずくと、怒りより先に涙が出た。

父も泣いた。薄明が初めて手から餌を食べた日、玻乃が熱を出した夜に水槽の前で一緒に眠ったこと、写真を撮るたび魚だけぶれていたことを、二人で順番に話した。

二人で水槽を片づけた。けれど全部は捨てなかった。薄明がいつも口で動かした白い石と、産卵もしないのに守っていた大きな葉を残した。

空の水槽には水だけを回した。

朝、父が照明をつける。

夜、玻乃が消す。

魚はいないのに、その習慣を三か月続けた。

春、二人は熱帯魚店へ行った。同じエンゼルフィッシュの水槽は見なかった。代わりに、真珠のような斑点を持つ一匹のパールグラミーの前で足が止まった。

「薄明には全然似てないね」と父が言った。

「だから、この子のことを最初から見られる」

新しい魚は「斑雪」と名づけた。

斑雪は薄明の代わりではない。空白を埋めるためでもない。白い石を気に入らず、いつも反対側の水草で眠った。餌の好みも、泳ぐ高さも違った。

その違いを見つけるたび、二人は少し安心した。

忘れなければ、新しい命を迎えてはいけないのではない。

忘れないまま、比べないで愛せる日を待てばよかったのだ。