四人目の選択
仙石律は、仮面の進行役の右手をつかみ、一番扉の認証板へ叩きつけた。青い輪が灯る。河瀬冬馬は二番、白妙杏は三番をすでに選んでいた。律は誰も触れていない四番へ走り、開いた隙間へ身を滑らせた。
進行役の声が裏返る。
「私は参加者ではない!」
「規則に参加者とは書いてない」
壁の一文は、まだ消えていなかった。
――この部屋にいる四人のうち三人が、互いに異なる番号付き扉を選ぶ。誰にも選ばれなかった扉を最初に通過した者を勝者とする。
冬馬と杏は、当然のように「三人」を自分たち三人だと思った。説明役は数に含まれず、選ぶ権利もない。そういうゲームの作法を信じたのだ。
律は違った。部屋にいる人間は、仮面の男を含めて四人。規則は三人の身分を指定していない。誰が選択者になってもよい。ならば進行役を一人に数え、自分は選ばずに残った扉へ走ればいい。
「手を押しつけただけだ。彼が選んだことにはならない」
杏が叫ぶ。
律は扉の内側から認証板を指した。青い輪の中央に、仮面の男の掌紋が表示されている。選択装置は意思ではなく生体認証で判定する。進行役自身が説明中、「板に触れた時点で選択が確定する」と実演していた。
主催者は、参加者同士が三枚を選び、残る一枚へ殺到する映像を欲しがった。そのため進行役を同室に置き、間近で煽らせた。だが「参加者」と書けば、進行役だけ安全圏だと露呈する。演出上の自然さを優先し、「この部屋にいる四人」と書いた。それが穴になった。
四番扉の先で、律の首輪が外れる。
進行役が自分の認証を取り消そうとしたが、板は赤く固定された。冬馬と杏の選択も確定済みだ。選ばれなかった扉は、もう四番しかない。
〈最初の通過者、仙石律〉
機械音が告げた瞬間、仮面の男の手首にも参加者と同じ赤い輪が点灯した。
律は笑わなかった。ただ、閉じる扉越しに言った。
「四人目を道具だと思ったのは、そっちだ」