家事観察実験_第十号
家事観察実験――第十号
【研究の目的】
赤ちゃんが生まれてから、お母さんは「大丈夫」と言う回数が増えた。
でも目の下が黒い。
そこで、ぼくが家事をすると黒いところが減るか実験する。
【実験一 靴を並べる】
結果。
玄関はきれいになった。
お母さんの目の下、変化なし。
考察。
靴だけでは効果が弱い。
【実験二 洗濯物をたたむ】
結果。
ぼくの服は四角くなった。
赤ちゃんの服は小さすぎて、たたんだのか丸めたのか不明。
お母さんは「助かる」と言ったあと、赤ちゃんを抱いたまま寝た。
考察。
効果が出始めた可能性あり。
【実験三 夕食後の皿洗い】
お父さんと共同研究。
ぼくが洗い、お父さんがすすぐ。
途中で水を飛ばし、お父さんの眼鏡が濡れた。
二人で笑ったら、お母さんも寝室から笑った。
結果。
目の下はまだ黒い。
笑顔は一回増えた。
【実験四 朝食を作る】
食パンを焼きすぎた。
黒いところを包丁で削った。
お母さんには、いちばん白い一枚を出した。
お母さんは食べながら泣いた。
失敗かと思ったが、うれしい涙だと言った。
【実験五 お母さんを起こさない】
日曜日。
赤ちゃんが泣いたので、お父さんがおむつを替え、ぼくがミルクの道具を運んだ。
お母さんは昼まで寝た。
起きてきたとき、目の下の黒いところは、少し薄くなっていた。
【結論】
家事一個では、すぐ元気にならない。
毎日少しずつやると、休む時間が増える。
休むと笑顔も増える。
【お母さんからの追記】
この実験には問題があります。
研究者が宿題を忘れています。
【ぼくからの再追記】
宿題も家事に入りますか。
【お父さんの判定】
自分のことを自分でするのも、家族を休ませる家事です。
【最終記録】
宿題をした。
自分の水筒を洗った。
赤ちゃんの靴下をたたんだ。
お母さんはソファで寝ていたので、毛布をかけた。
目の下の黒いところは、まだ少しある。
でも「大丈夫」と言わずに、「ありがとう」と言うようになった。
実験は成功したと思う。
なお、家事観察実験は期限を決めず、家族全員で継続する。