攻撃するほど遠い朝

夜獣の爪を避け、鷲尾レンジは剣を鞘へ戻した。

《夜明けタイマー》

残り時間がゼロになると太陽が昇ります。

敵へ一ダメージ与えるたび、残り時間が一秒増加します。

《残り:42秒》

「攻撃を止めるな!」

攻略隊は夜獣バルガのHPを削り続ける。必殺技が一万ダメージを与え、夜明けは二時間以上遠ざかった。

バルガは何度倒しても闇から復活する。日の出まで生き残れば消えるという説明を、皆「時間内に倒せ」の意味だと読んでいた。

レンジは盾も捨て、回避だけに徹する。攻撃しなければ敵視が下がり、バルガは火力役へ向かう。

「臆病者!」

大剣が獣の胴を裂き、残り時間がまた増える。レンジは味方の刃を受け止めた。

「こいつを倒すほど、朝が来ない!」

バルガの胸には、細い鎖が夜空へ伸びている。攻撃を受けるたび鎖が太くなり、太陽を地平線の下へ引き戻していた。

攻略隊の一人が剣を下ろす。次に魔術師。最後まで攻撃していた隊長も、残り時間が三時間を越えた表示を見て手を止めた。

そこからは、逃げるだけの戦いだった。

三時間、誰も一撃も返さない。傷ついた者を抱え、倒れた者を起こし、バルガの爪を避け続ける。残り十秒、獣はレンジの前で足を止めた。

「なぜ、殺さない」

「朝になったお前を見たい」

ゼロ。

太陽が昇り、夜獣の黒い毛が金色へ変わる。現れたのは、夜を一身に引き受けて村を守っていた守護獣だった。

《夜獣討伐失敗》

《夜明けまでの無攻撃時間:三時間》

朝日を浴びた守護獣バルガの背には、村の紋章が刻まれていた。夜になるたび魔物を自分へ集め、村へ一匹も近づけない役目を負っていたという。

攻略者の攻撃は、彼を傷つけるだけでなく、「まだ夜を引き受けろ」という命令として鎖へ加算されていた。

隊長は大剣を置き、増やしてしまった三時間を謝った。バルガは答えず、その横へ伏せる。レンジたちは夜明けまで逃げた疲労で座り込み、初めてボスと同じ朝を見た。

《タイムアタック達成――最速で朝を迎える方法は、夜を傷つけて延長しないことでした》