最後の願いを縛る縄
絞首縄は、死刑囚の最後の願いを一つだけ叶える。
ただし願いを聞いた処刑人は、その願いに含まれた言葉を二度と口にできなくなる。パンを、と願われれば「パン」を失い、母に会いたいと言われれば「母」と「会う」が舌から消える。
処刑人ニオブは、少年タルサの首へ縄を掛けた。罪状は神像の破壊。実際には、神像の腹から子供たちの骨を見つけ、外へ出そうとしただけだ。
「最後の願いを」
広場の壇上で司教が見守っている。神像は孤児を捧げる器だった。次の犠牲には、ニオブの息子も選ばれていた。
タルサは縄越しに囁いた。
「真実を、みんなに聞かせたい」
縄が黒く脈打つ。その願いを受け入れれば、ニオブは「真実」「みんな」「聞く」を失う。証言した後、二度と真実という概念を言葉にできなくなる。
「もっと小さな願いにしろ」と彼は言った。「水でも、祈りでも」
「小さくしたら、次の子が死ぬ」
ニオブは足台の留め金へ手を置いた。群衆の中に息子がいる。こちらを見上げ、父が正しい仕事をするのだと信じていた。
「願いを受ける」
縄が締まり、ニオブの喉から三つの言葉が焼け落ちた。同時に、タルサの声が広場中の絞首縄、荷縄、靴紐から響き出す。神像の内部。司教の鍵。消えた孤児の名。骨を見つけた夜のすべてが、千本の縄を震わせて語られた。
兵が司教を取り囲む。群衆が神殿へ雪崩れ込む。ニオブは足台を蹴らず、短剣で縄を切った。タルサは落ち、咳き込みながら生きていた。
司教が叫ぶ。
「処刑人こそ反逆者だ! その男の言葉は偽りだ!」
ニオブは反論しようと口を開いた。
だが何を守ろうとしていたのか、その名前が舌にない。人々を指し示す言葉も、声を受け取る行為の言葉も消えている。彼は必死に喉を震わせたが、意味のない息しか出なかった。
息子が壇上へ上がり、父の手を握った。
「分かってる。父さんは、本当のことをした」
ニオブには「本当」という語さえ理解できなかった。それでも息子の温度だけは分かり、言葉を失った口で、初めて何も偽らない笑みを作った。