檻の中のひな竜

魔獣使いの免許試験で、カヴェリオに与えられた相棒は、翼の折れたひな竜ティリだった。

「交換を申請してもいいぞ」

試験官は親切そうに言った。檻の向こうには鎧獅子が唸っている。ひな竜は飛べず、炎も吐けない。守る価値がないと判断し、強い魔獣へ乗り換えられるかを見る試験だった。

カヴェリオはティリを背後へ隠した。

「交換されるべきなのは、相棒を道具だと思う制度のほうです」

ティリの翼を折ったのは、前の受験者だった。速く飛べないと分かると、檻へ投げ戻したのだ。カヴェリオは試験開始までの三日間、餌を手から与え、裂けた翼膜を毎晩縫った。ひな竜が初めて覚えた人間の言葉は命令ではなく、彼の『痛くないか』だった。

試験官の笑顔が消えた。見学席では、ティリが何歩飛ばされるか賭けが始まっていた。ひな竜は折れた翼を広げ、逆にカヴェリオをかばおうと前へ出る。彼は小さな頭を撫で、そっと自分の踵の後ろへ戻した。『今日は守られる練習をしよう』

彼は鎧獅子の首輪を外し、攻撃命令を出す。獣は鉄を腐らせる酸炎を吐いた。緑の火と煙が檻いっぱいに膨らみ、床の鎖が泡になって切れる。

試験官が異常に気づいたのは、鎧獅子が吠えなかったからだ。

獲物を焼いた後は必ず勝ち鬨を上げる調教をしてある。だが獣は煙を睨み、前脚の爪を床へ立てたまま動かない。鼻先が恐怖で細かく震えていた。

煙が晴れる。カヴェリオは片手を広げた同じ姿勢で立ち、ティリはその踵へ鼻を押しつけていた。酸炎を浴びたはずの服にも、ひな竜の薄い翼膜にも穴一つない。

「怯えるな! 突撃しろ!」

試験官は首輪の懲罰針を作動させた。鎧獅子は悲鳴を上げ、全身の魔力を額の角へ集める。城壁を貫く《獣王衝》だ。

カヴェリオはティリへだけ聞こえる声で言った。

「見ておけ。強いというのは、命令に逆らえないことじゃない」

巨体が煙を巻き上げて突進した。角がカヴェリオの掌へ触れた瞬間、鎧獅子の脚が止まる。角も爪も折れていない。それでも、これ以上進めば自分が壊れると獣だけが理解した。

命令を無視し、鎧獅子は一歩退いた。