氷河村の根菜札

氷河の麓にあるネーヴェ村では、冬の敵は寒さではなく、腐った芋だった。

各家の床下は湿り、秋に掘った根菜の三分の一が年越し前に黒くなる。それでも地主たちは「貧乏人は保存が下手だ」と笑うだけだった。

村を任されたフィオは、崩れた採石場の横穴を見て言った。

「ここを共同の貯蔵穴にします」

乾いていて、気温も一定だ。ただし誰が多く棚を使うかで争いになる。フィオは木札を二種類作った。白札は家族一人につき十二枚。芋一籠で一枚を棚へ掛ける。青札は穴掘り、棚作り、見張りの一刻につき一枚。ただし青札で増やせる保管枠は一家四籠まで。金持ちが人を雇い、棚を独占できないようにした。

利用税は保管した根菜の二十分の一。集めた分は腐敗や火事で食料を失った家へ回す。税の籠には蓋をせず、毎週、子どもでも読める大きな数字で残量を掲示する。

大農家のドルンが笑った。

「俺の芋を、働かぬ家へ渡せと?」

「違います。あなたの芋十九籠を、春まで守る代金です。二十分の一より安い貯蔵穴があるなら、そちらへどうぞ」

翌日、最初に石を運んだのはドルンの娘だった。去年、床下で種芋を半分失ったのだという。続いて靴屋が棚板を出し、羊飼いが通気口の網を編んだ。老人たちは芋の傷を見分け、悪いものを入口で弾いた。

貯蔵を始めた翌週、雪解け水が村へ流れ込み、二軒の床下が水没した。以前なら、その家は地主へ高利で芋を借りるしかない。

フィオは税籠の蓋を開け、板に書かれた数を皆と確かめた。失った人数分だけを渡しても、春までの安全線は下回らない。

被災した母親は泣いて礼を言おうとしたが、ドルンの娘が白札を渡した。

「これは最初から、その日のための籠です」

十日後、横穴には土の匂いと乾いた冷気が満ちた。白札が等間隔に揺れ、どの家の棚も同じ幅だった。

フィオが税籠へ最初の蕪を置くと、ドルンも大きな芋を一つ載せた。

入口では子どもたちが板を掲げた。

――春まで眠る根菜庫。

その奥で、百の籠が腐らず静かに冬を待ち始めた。