沈んだ飛空艇と三本の綱

雲海へ落ちかけた飛空艇を、レオンは砂丘へ不時着させた。

判断は半分正しく、半分間違っていた。乗客は全員無事だったが、船底は裂け、積み荷の半分が砂に埋まった。船長代理だった彼の責任だ。

救助隊の気球が来るまで三時間。乗客を降ろし終えたあと、船体には風が抜ける音だけが残った。レオンは壊れた操舵室で航海日誌を書き、最後の頁に辞任と記した。震える文字を二度書き直しても、責任の重さは軽くならない。かつて所属した船団では、帆を一枚破っただけで名簿から消された。今回も、三人は先に気球へ乗るだろう。マレッタには船団、イスカには工房、ヴェラには通信塔がある。壊れた船と失敗した操舵士に付き合う理由などない。

彼は三人の私物を救助袋へ詰め、搭乗順の一番上へ名前を書いた。自分の名だけは最後にした。

扉を開けると、船長マレッタが待っていた。彼女は胸元の方位盤を外し、航海日誌の上へ置く。

「次の針路はお前が決めろ。辞めるなら、港まで運んでからにしろ」

機関士イスカは、裂けた船底ではなくレオンの個室を板で塞いでいた。釘を打ち終え、簡易寝台を元の位置へ戻す。

「修理の優先順位がおかしいって顔だな。船は野営できる。でも、あんたの寝床がないと帰ってこないだろ」

通信士ヴェラは救助気球へ発光信号を送った。返ってきた光を見て、満足そうに旗を畳む。

「一便目は乗客だけ。二便目まで待つと伝えた」

「三人とも先に帰れ。僕が船を壊したんだ。次の船長は、もっと迷わない人を選べ」

マレッタは方位盤を指で弾いた。イスカは最後の釘を打った。ヴェラは気球へ渡す名簿から三人の名前を消し、レオンの隣へ書き直した。

砂嵐が近づく。三人は船体の左右と尾部へ走り、係留綱を地面の杭へ結んだ。

風に煽られた辞任頁が操舵室から飛び出した。ヴェラが拾い、読まずに丸めて工具箱へ押し込む。マレッタは笑わず、イスカも慰めない。ただ、レオンの分の手袋を杭の上へ置いた。

レオンも四本目を手に取る。

不時着した船はもう飛べない。それでも三本の綱が、彼の帰る操舵室を先に守っていた。