火を食べるものの冬

礼拝堂の扉は、内側から焼け落ちようとしていた。

地下へ逃げた人々の上で、油を撒かれた長椅子が燃えている。窓には鉄格子。外では、疫病持ちを浄化するのだと司祭たちが祈りを唱えていた。

オルクスは角を梁へぶつけながら、炎の中を進んだ。山羊の脚、煤けた皮膚、裂けた腹。人々は彼を火魔と呼ぶが、彼が口へ入れた炎は二度と誰も焼かない。

ただし火を一息呑むたび、身体のどこかが灰へ変わる。

最初の炎で、左耳が崩れた。

二口目で、舌の先が灰になり、味が消えた。

三口目を呑むと、右手の指がさらさらと落ちた。それでも地下室への階段が見えるまで、炎はまだ壁一面に生きている。

「もうやめて」

階段下からエメラが叫んだ。彼女は赤子を抱き、ほかの者を裏口へ導いていた。

「あなたまで死んだら、誰が次の火を食べるの」

オルクスは笑ったつもりだった。舌がないので、喉から煤が漏れただけだった。

天井から燃えた聖像が落ち、出口を塞ぐ。外の司祭が鐘を鳴らすと、床下へ火の蛇が走った。病人だけでなく、証人も残さないつもりだ。

オルクスは胸を裂き、肺まで炎を吸い込んだ。

左の肺が灰になる。

火の蛇を噛み切り、もう一度吸う。右の肺も崩れた。呼吸は止まったが、異形の心臓はなお赤く脈打っていた。

最後に、祭壇そのものが白い火を噴いた。あれを呑めば心臓まで灰になる。エメラが戻ってきて、残った腕へ縋った。

「一緒に出よう」

彼は赤子の頬へ、角の先でそっと触れた。温かかった。

その温度を覚えたまま、白い炎へ口を開いた。

礼拝堂の火は一瞬で細くなり、オルクスの胸へ吸い込まれた。扉が崩れ、雨の夜が現れる。人々は煙の中から外へ走った。

エメラが振り返ると、彼は祭壇の前に立っていた。

角も、脚も、胸も形を保っている。だが全部が灰だった。雨粒が触れるたび、輪郭が少しずつ崩れていく。

「オルクス」

呼び声に、灰の頭がわずかに傾いた。

赤子が泣き止み、小さな手を伸ばす。けれど彼の胸にはもう火も鼓動もなく、その手の温かさを感じる場所もなかった。

冬のように冷たい灰だけが、守った者たちの足跡へ静かに降り積もった。