王墓の黒い子守歌

王墓に黒い幼竜が出た、と報せが届いた。

王家の棺を守る呪いに違いない。そう決めつけた近衛たちは、松明を何十本も掲げて地下墓所へ踏み込んだ。石棺の陰で幼竜が翼を広げ、甲高く鳴くたび、炎が大きく揺れた。

墓守のオスカーは、列の最後で眉をひそめた。

黒竜は闇を操ると恐れられている。だが幼竜の目から流れているのは呪いではなく、涙だった。松明の脂煙が低い天井にたまり、まだ薄い瞼へ煤が張りついている。

墓守は暗さを恐れない。むしろ火を持ち込みすぎれば、石も壁画も傷むことを知っている。生まれたての目なら、なおさらだった。

「もっと明るくしろ!」と隊長が命じた。

「逆です。火を消してください」

嘲笑が起きた。老いた墓守が何を知る、と。

オスカーは自分の松明から消した。腰の水筒を布へ含ませ、石床に座る。暗くなった場所へ手を差し出すと、幼竜は翼で顔を覆ったまま、少しだけ近づいてきた。

「墓の中で泣くのは、死者だけで十分だ」

低い声で、オスカーは昔、娘に歌った子守歌を口ずさんだ。黒い鼻先が布に触れる。逃げないのを確かめ、彼は煤で固まった瞼を片方ずつ拭った。

一度、二度。布は真っ黒になった。幼竜が顔を背けるたび手を止め、戻ってくるまで歌だけを続けた。急がせる者は、もう誰もいない。

やがて幼竜が目を開く。闇の中で、瞳は夜空の星のような紫に光った。唸り声は消え、代わりに小さな喉が、くるる、と鳴る。

隊長が新しい松明を掲げようとした瞬間、幼竜はオスカーの外套へ頭から潜り込んだ。彼が抱き上げると、翼を畳み、胸に頬を寄せてしまう。

「墓守を、選んだ……?」

誰かがつぶやいた。

王家が何代も契約を求めて得られなかった黒竜である。だがオスカーには、そんなことはどうでもよかった。

煤を落とした鱗は磨いた黒曜石より滑らかで、初めは墓石のように冷たかった体が、腕の中で少しずつ温まっていく。その小さな重みは、空だった外套の内側を久しぶりに満たしていた。