王都最後の公開処刑

摂政ドラヴェンは、公開処刑を祭りに変えた。

朝から太鼓が鳴り、入場券にはフィーゼの首が落ちる予想時刻まで印刷されている。売上の一部を戦災孤児へ寄付すると触れ回ったが、その孤児院は先月、予算不足で閉じていた。

広場には屋台が並び、処刑台の周囲には金貨一枚の特等席まで設けられている。今日の罪人は、反逆者フィーゼ。かつて王子だったドラヴェンを戦場から連れ帰った女騎士だ。

当時七歳の王子は、彼女の背で泣きながら「置いていかないで」と繰り返した。今、その救出を知る古参兵は全員、広場の警備から外されている。

「命乞いをすれば、楽に殺してやる」

玉座を模した椅子から、ドラヴェンが言った。

フィーゼは処刑台で片膝をついていた。鎧は剥がされ、古い肌着一枚。それでも頭は下げない。

「先王の遺言を公表しなさい」

「偽造文書の話は聞き飽きた」

摂政が指を鳴らすと、宮廷魔術師が火球を放った。

火球は処刑台を丸ごと飲み込み、屋台の布まで焦がした。人々は歓声を上げたが、炎が消えるにつれ、声も消えた。

フィーゼは同じ片膝の姿勢で残っていた。

腕を膝に置き、まっすぐ摂政を見ている。床だけが炭になり、彼女の肌着は白いままだ。

ドラヴェンの笑みが引きつった。

宮廷魔術師は掌を見た。魔力は確かに減っている。台の炭を踏んだ靴底も焦げた。術が幻だったのではなく、フィーゼだけが炎の結果から取り残されていた。

「大道芸だ。竜を出せ」

広場の地下檻が開き、鎖につながれた紅竜が頭をもたげる。摂政は自ら竜角の笛を吹いた。怒り狂った竜が口を開き、城壁を溶かす息を吐く。

赤白い奔流が処刑台を覆った。

石が液状になり、結界の外で旗が燃える。熱風が過ぎたあとも、白煙は広場を隠し続けた。

最初に人影を見つけたのは、笛を持つドラヴェンだった。

紅竜はもう息を吐こうとしなかった。鎖を引かれても首を伏せ、低く喉を鳴らしている。獣のほうが、人間より先に異常を理解したらしい。

片膝をついた輪郭。

煙が晴れるほど、それが一度も動いていないと分かる。

フィーゼは無傷だった。溶けた石の上に、最初と同じ姿勢でいる。

「昔から、怖いときは左足が下がるのね。坊や」

古参兵ではない若い警備兵まで、その呼び方で真実に気づいた。祭りの太鼓が一つずつ止まり、最後には紅竜の鎖が鳴る音だけが残った。

摂政は反射的に左足を引いた。

そして右足も続き、ドラヴェンは玉座から一歩退いた。