白百合を持たない日

私は、絃の小さな追悼会に呼ばれなかった。

十年の親友だった私を外すなんて、残った三人は悲しみで判断を失っている。

会場の前で待っていると、誰も白百合を持っていなかった。絃が嫌いだった花だ。私は何度も皆に教えたのに、覚えていたことが腹立たしい。

私は代わりに薄桃色の花束を抱えていた。絃の部屋のカーテンと同じ色だ。最後に会った夜、彼女はカーテンを閉めたがった。朝日を浴びさせたほうがいいと、私が紐を結んで開かないようにした。

もう一つ奇妙なのは、三人ともスマートフォンを透明な袋に入れていたことだった。私が写真やメッセージを確認できないよう、証拠品みたいに封をしている。

扉の向こうでは、絃が好きだったピアノ曲が流れていた。私が選曲表へ入れたことのない曲だった。

「絃なら、私に来てほしいって言う」

そう告げると、友人の一人が封筒を差し出した。絃が亡くなる前、弁護士へ預けた手紙だった。

《佐和を入れないで。私の言葉を、また佐和の言葉にされたくない》

続きには、私が絃の端末から交際相手へ別れを送り、転職の連絡を断り、体調が悪いと友人たちへ返信していたことが書かれていた。人に会うと疲れる絃の代わりに、予定を整理してあげただけだ。

会いたいと言う相手には、絃が迷惑がっていると伝えた。絃には、皆が忙しくて返事をくれないと説明した。二人きりなら彼女は落ち着いたし、私の腕をつかんで離さなかった。あれを恐怖と呼ぶのは、死者の気持ちを勝手に決めることだ。

絃が深夜に「一人にして」と送った時も、私は合鍵で部屋へ入り、朝まで手を握った。逃げないようスマートフォンを預かったのは、危ない考えを止めるためだった。

「私がいなかったら、もっと早く死んでた」

誰も反論しなかった。代わりに、接触しないよう求める書類を渡された。

扉が閉まり、内側から鍵の回る音がした。

帰り道、私は絃の古い番号を入れた端末を確かめた。

彼女のメールへ届く認証コードは、今も私だけが受け取れる。