竜鱗と割れ鐘

「二つの物の相性しか分からぬ鑑定士に、竜の強さは測れん」

竜狩り団長グロムはフェリオを荷車ごと隊列から追い出した。

【共鳴鑑定:選んだ二対象の魔力共鳴率を百分率で表示する】

剣と使い手の相性を見る程度。竜の弱点も素材の品質も出ない。フェリオは山麓の廃村へ取り残された。

夕暮れ、討伐隊が斜面を転がり落ちてきた。

天晶竜の鱗は、聖剣も大砲も弾いた。竜殺しヴァシェルの一撃さえ火花を散らしただけで、怒った竜が村へ降りてくる。青白い鱗が鳴るたび、周囲の魔法が乱れて消えた。治癒術まで散らされ、負傷者は血を押さえながら後退している。

団長グロムは最後の破竜矢をつがえたが、矢尻は一枚の鱗に当たって縦に割れた。村の背後は崖で、逃げ道はない。竜が翼を広げると、家々の窓が共鳴して一斉に砕けた。

フェリオは地面に落ちた一枚の鱗へ触れ、武器を片端から鑑定した。

聖剣、十二パーセント。竜槍、九パーセント。魔導砲、二パーセント。

どれも低い。

そのとき風が吹き、廃礼拝堂の割れた鐘がかすかに鳴った。竜の鱗も、同じ高さの音で震えた。

フェリオは鐘と鱗を選ぶ。

――魔力共鳴率:百パーセント。

前世で橋の振動事故を学んだ記憶が蘇る。硬いものは、硬いから壊れないのではない。自分と同じ揺れを与えられたとき、最も激しく揺れる。

「鐘を鳴らしてください!」

グロムが怒鳴る。

「祈っている場合か!」

フェリオは鐘楼の綱をヴァシェルへ投げた。

「剣では鱗を割れません。でも、鱗自身に鱗を壊させられる」

竜殺しが綱を引く。割れ鐘が一度鳴ると、天晶竜の全身から同じ音が返った。二度、三度。鱗の隙間に細い亀裂が走る。竜は魔力で音を消そうとしたが、共鳴は内側から増幅した。

七度目の鐘で、胸の鱗が一斉に浮いた。

ヴァシェルの槍が、その隙間へ深く沈む。天晶竜は声もなく崩れ、青い鱗が雨のように村へ降った。

団長グロムが何か言う前に、ヴァシェルは竜の角を地へ突き立てた。

「強さを測れぬ鑑定士だったな」

竜殺しはフェリオへ鐘楼の綱を渡す。

「訂正する。強さを、壊れる音へ変える鑑定士だ」