羊毛税で葺く屋根
高原の村では、孤児のティアが羊小屋で暮らしていた。羊は温かい。けれど雨の夜は、屋根から落ちる雫を桶で受け続けなければならない。
村を任されたクレイグは、新築の大孤児院を断った。石材を運ぶだけで三年かかる。それより、空いている産婆の家を直せば十日で住めた。
問題は屋根だった。
「羊一頭ごとに課税か」
牧人たちが険しい顔をした。
「違う。春に刈った羊毛のうち、売れた分の百分の二。自家用と、病気の羊から刈った分は除く。納めるのは銅貨でも羊毛でもよい。使途は屋根材と冬の毛布だけ。村の秤で計り、その場で台帳へ記す」
さらにクレイグは、領主牧場の羊毛にも同じ率を掛けた。昨年まで無税だった百頭分である。
「これなら、羊を増やした者だけ罰を受けない」
若い牧人が呟いた。
最初に羊毛を持ってきたのは、ティアを小屋に置いたままにしていた牧場主だった。
「謝る言葉は思いつかん。せめて一番厚い束を使ってくれ」
それから女たちが羊毛を防水布へ織り、男たちが古い屋根を剥がした。ティアは色糸で束を結び、誰の羊毛か分かるようにした。灰色、黒、白、茶。屋根の裏には村中の羊の色が並んだ。
部屋は一番暖かい南側をティアへ与える案が出たが、彼女はそこを共同居間にしたいと言った。自分だけが恩恵を受ければ、次の子が来た時に譲るか悩むからだ。代わりに北の小部屋へ小さな窓を付けてもらい、そこを自分で選んだ。
完成後、クレイグは家の管理を一人の後見人へ渡さず、三人の輪番制にした。食費、修繕費、寄付は玄関の帳簿に記し、ティア自身にも閲覧権を与えた。
「子どもが帳簿を見るのか」
「自分の暮らしが、誰かの気分で消えないと知るためだ」
その夜、雨が降った。
ティアは桶を抱えて部屋の中央に座った。皆が心配して見守る中、一滴も落ちてこない。やがて彼女は桶を裏返し、その上に立った。
屋根裏から垂れた色糸へ手を伸ばし、白い一本に小さな鈴を結ぶ。
雨音の下で、家の鈴だけが晴れやかに鳴った。