花嫁のいちばん古い友人

杏珠は、結婚してから変わった。

昔は何でも私に相談したのに、式の準備だけは見せたがらない。ドレスの試着にも呼ばず、余興も頼まなかった。私が「いちばん古い友人としてスピーチをしたい」と申し出ると、彼女は少し黙ってから、三分以内ならと言った。

冷たいと思った。

だから私は、杏珠の本当の魅力が伝わる原稿を書いた。学生時代、彼氏が途切れなかったこと。今の新郎と出会う直前まで別の人に迷っていたこと。見栄っ張りだけれど寂しがりで、放っておけない女性だということ。欠点を隠す賛辞なんて、薄っぺらい。

式当日、杏珠は私の原稿を確認しなかった。ただ、受付で私のバッグへ白い封筒を入れ、「スピーチの前に読んで」と言った。封筒は糊づけされていないのに、私は開けなかった。最後まで私を試している気がしたからだ。

もう一つ、彼女は私の席を新郎の元同僚たちから離し、親族席の端に置いた。私が新郎と以前から連絡を取っていたことを、気にしているのだろう。結婚への不安を聞いてあげただけなのに。

司会に名前を呼ばれ、立ち上がったところで、杏珠が私を見た。

「礼子、封筒」

皆の視線が集まる。仕方なく開くと、印刷されたメッセージの束が入っていた。差出人は私。新郎へ送ったものだった。

〈杏珠は結婚に向かない〉

〈今ならまだ間に合うよ〉

〈あなたのことを一番理解しているのは、たぶん私〉

最後の一枚だけ、返信があった。

〈このやり取りは杏珠に共有します。今後、個人的な連絡は控えてください〉

私は笑ってごまかした。心配しすぎただけだ。親友なら、間違った結婚を止める義務がある。

司会が「では、思い出のお話を」と促した。

私は原稿を開いたが、最初の一行が読めなかった。杏珠はマイクを受け取り、穏やかに言った。

「礼子は、私の人生をいつも自分の話にしてくれました」

拍手が起きた。褒め言葉だと受け取ったのは、会場で私だけだった。

テーブルの席札には、私の名前の下に〈新婦友人・終了〉と印刷されていた。