誤爆した待ち合わせ

「二人きりになったら、中止にしよう」

小此木鈴音は、友人たちとのキャンプ計画が二人参加になりそうなとき、いつもそう言った。真田冬弥とだけ出かければ、周囲はすぐに恋人扱いする。二人とも否定するのが面倒で、四人以上を条件にしてきた。

秋のキャンプ前夜、参加予定者が一人ずつ発熱や残業で抜けた。残ったのは鈴音と冬弥だけ。

鈴音は親友へ送るつもりで、個別メッセージを打った。

《本当は二人で行きたい》

《でも冬弥が“友達なら大人数が楽”って言ったから、中止って言う》

《好きなのがばれるより、また次があるほうがいい》

送信後、宛先が冬弥になっていることに気づく。慌てて画面を閉じても、既読の表示は消えない。

返信は《了解》の二文字だけだった。

翌朝、鈴音は中止になったつもりで眠っていた。用意していた厚手の靴下も、二人で選んだランタンも、床へ置いたままだった。冬弥が好きな豆を挽いて持っていくつもりだったことまで、急に恥ずかしく見える。七時、インターホンが鳴る。玄関の外に、リュックを背負った冬弥が立っていた。片手には二人分のコーヒー、もう片方には変更済みのキャンプ場予約票。

人数欄は《二名》。代表者欄の下に、《同行者 小此木鈴音》と印字されている。

「了解って、中止の意味じゃないの」

「二人で行きたい、のほうを了解した」

鈴音は顔を覆った。冬弥は笑わず、彼女のリュックを持ち上げる。代わりに空いた手を差し出した。

「嫌なら、ここで中止にする」

その言い方がずるい。鈴音は差し出された手を握り、玄関の外へ出た。冬弥が車の鍵を開けても離さないので、二人は不器用に並んで駐車場まで歩く。

車内で冬弥は共有アルバムの名前を《友達キャンプ》から《鈴音と冬弥》へ変えた。次の予約日も、冬のコテージで入れている。

「次も二人?」

「また次があるほうがいいんだろ」

鈴音は予定を承諾し、彼の肩へ軽く頭を預けた。

二人きりになったら中止にするはずだった。

その朝、中止になったのはキャンプではなく、友達のふりのほうだった。