麦わら一枚ぶんの雨

赤陽領の玉葱畑では、農民が作物より雑草を育てていた。

 抜いても三日で芽が出る。土は昼には石のように乾き、百人が朝から草を取り、夕方に水を撒いても、収穫は年々減った。領主の農務官は人手不足を理由に、子どもまで畑へ出す命令を出した。

 水守凪紗は、刈り終えた麦畑に積まれていた藁を指した。

「捨てるなら、玉葱へください」

「畑を寝床にする気か」

 農務官ヒュゼンは笑い、最も雑草の多い二畝を試験に使わせた。

 凪紗は片方の畝だけ、玉葱の株間を麦藁で覆った。厚さは指四本。株の根元だけ少し空け、土が見えないよう隙間なく敷く。もう片方は従来どおり裸のままにした。

 七日間、両方へ同じ桶数の水を与えた。

 八日目、農務官と百姓たちが雑草を数える。裸の畝は二百六十三本。藁の畝は十四本。光を遮られた芽が、藁の下で白いまま止まっていた。

 凪紗は土へ木串を刺す。裸の畝では指一本の深さで粉になった。藁の下は指三本まで黒く、土を握ると塊になる。昼の熱も風も、藁が直接土へ当たるのを防いでいた。

 正午、裸畝の土へ置いた温度石は赤くなり、藁の下の石は三目盛り低かった。玉葱の細い根を掘って比べても、裸畝では先端が乾き、藁畝では白い根が株間まで伸びている。

「藁が水を奪っただけだ」

 ヒュゼンは言ったが、秤に載せた玉葱の葉は藁畝のほうが一株平均二割重い。水を増やしていないのに、葉先の枯れも半分だった。

 さらに草取りの作業札が並ぶ。裸の一畝に十五人で二刻。藁の一畝は三人で半刻。子どもを出す必要はない。

 藁は去年まで焼却に銀貨八枚を使っていた廃物だ。凪紗は新しい肥料も魔石も求めていない。ただ土へ一枚の屋根を置いただけだった。

 視察していた領主夫人は、泥だらけの子どもの手から鍬を受け取り、農務官へ渡した。

「明日から、この者たちは学校へ戻す。藁敷きは領内二百畝で採用する」

 そして凪紗へ、焼却費八枚ではなく、削減できた人足賃の半分を記した契約札を差し出した。