ゼロ点の治癒師
神余レオナの貢献度は、最終戦の最中も《0》のままだった。
《ギルド貢献度》
敵へ与えたダメージ一につき一点。
報酬は上位十名だけに分配します。
「回復しかできない寄生は除名だ」
団長の操作で、レオナの紋章が消える。彼女は三年間、誰も死なせなかった。それでも敵へ一ダメージも与えていないため、数字はゼロだった。
直後、獣王が全体攻撃を放つ。
レオナは除名されたため、ギルド回復魔法の対象から外れている。それでも範囲の端へ立ち、自分のHPを削って仲間へ回復を流した。団長たちは報酬順位を争い、獣王のHPを一まで減らす。
獣王が膝をつき、胸の核を開く。
《最終判定:最も貢献度の低い者を生贄として要求》
団長は笑った。
「ゼロ点ならレオナだ」
だが彼女はもうギルド員ではない。判定対象外。
次に低い者は、攻撃を避けて最後の一撃だけ狙っていた団長だった。
《貢献度:1》
獣王の鎖が団長を捕らえる。高得点の者たちは、自分の順位を守るため回復薬を使い切っていた。レオナだけが助けられる。
「戻してくれ! 副団長にする!」
彼女はギルドへ戻らず、団長だけを回復した。恩を売るためではない。目の前で死なせないという、自分の役目を守るためだ。
回復を受けた団長の貢献度は増えない。鎖は外れず、代わりに獣王の頭上にレオナへの白い数字が現れる。
《生命維持点:八十六万》
《獣王討伐成功》
《攻撃貢献度ランキングを廃止》
団長を救ったあと、レオナは再加入申請を拒否した。数字の付け方が同じなら、副団長という肩書もゼロ点を隠す飾りにしかならない。
獣王の鎖から解放された団長は、生命維持点を自分の実績へ加えようとした。だが白い数字はレオナの頭上から動かない。
回復された者たちの一覧には、団長の名も、新人の名も、敵対NPCの名も並んでいた。彼女は所属で治す相手を選んでいない。
獣王の角から作られた報酬杖には、攻撃力ではなく《戦場に残した人数》だけが刻まれた。
《真の貢献者を認定――敵を減らした者ではなく、戦場から仲間が減ることを防いだ者》