七番を二度通る

鳴海伊織は七番扉を駆け抜けると、すぐに踵を返し、同じ扉を逆向きに通った。

一度目の電子音。二度目の電子音。頭上の表示が〈14〉に変わり、緑色の線が伊織の足元まで伸びた。

真壁章吾は五番扉へ向かって走り出したところだった。廊下の反対端には九番がある。五と九を通れば十四になる。誰でも思いつく正攻法だが、二枚の距離は二十メートル以上ある。

規則は一つだけだった。

――先に、通過した番号付き扉の番号合計を十四にした者を勝者とする。

「同じ扉は一回だろ!」

章吾が叫びながら五番を越える。表示は〈5〉。彼が九番へ着く前に、伊織の首輪は解錠を始めていた。

「一回ずつとは言っていない。方向も指定していない」

七番は両開きで、通過後も閉まらない。床の赤外線は横切るたびに番号を加算する仕組みだった。主催者は五と九、あるいは六と八のような組み合わせを競わせるつもりだったのだろう。だが、この廊下に六番も八番もない。わざと遠い五番と九番だけを置き、体力勝負に見せかけた。

伊織は説明中、司会者が「通過した扉の番号」ではなく、「通過した番号付き扉の番号」と繰り返したことを覚えていた。扉を一枚ずつ数えるなら、重複を禁じる言葉が必要になる。

七番の上には通過方向を示す矢印がなかった。伊織はそれも確認していた。片方向だけを数える装置なら、入口側と出口側を区別する表示が必要なはずだ。実際、二度の電子音はまったく同じ高さで鳴った。

章吾は九番まであと三歩のところで立ち止まった。彼の表示も十四になればどうなるのか。だが勝利条件には「先に」とある。もう覆らない。

「反則判定を要求する!」

章吾の声に、機械は無感情に返す。

〈七番、二回通過。合計十四。最先着を確認〉

伊織の扉の先に白い光が点いた。

彼は七番の縁を軽く叩いた。

「足し算で見せたかったんだろうけど、同じ数字を二度使えないのは、紙の問題だけだ」

背後で九番が閉じるより早く、勝者用の隔壁が伊織を包んだ。