五度目で飛んだ銀豆

公爵家の祝宴で、老侯爵が銀豆菓子を喉に詰まらせた。

声が出ない。咳もできない。顔だけが紫へ変わっていく。

客たちは水を飲ませようとし、侍医は喉へ指を入れようとした。配膳係のフロレンは杯を払い落とし、侯爵を立たせたまま上体を前へ傾けた。

「背を叩くなど不敬だぞ!」

公爵の怒鳴り声より早く、フロレンの掌底が肩甲骨の間へ落ちた。

一度。何も出ない。

二度。侯爵の喉が鳴る。

三度。客席から悲鳴が上がる。

四度。侍医が止めようと腕を伸ばす。

五度目、銀色の豆菓子が白い卓布へ飛び、葡萄酒の杯を倒した。

侯爵は大きく息を吸った。次の瞬間、咳を三回し、涙を流しながら笑い出す。

「背中を殴られて、これほど嬉しい日はない」

侍医は面目を守ろうと、「指で取る寸前だった」と言った。フロレンは卓布の上の豆を指した。喉の奥に見えない物へ指を入れれば、さらに押し込むところだった。

祝宴は七分で再開した。温め直した料理は一皿もなく、百二十人分の給仕も遅れなかった。侯爵は銀豆菓子だけを皿の端へ避け、代わりに肉を二切れ平らげた。

侯爵夫人は震える手でフロレンの制服についた葡萄酒を拭い、「背中を叩いたことを謝らないで」と囁いた。周囲の客も、身分より呼吸が先だと初めて口にした。

フロレンは飛び出した豆を小皿へ置き、侯爵が詰まらせてから息を取り戻すまでを砂時計で測った。四十六秒。水を探していた従者は、その間に杯すら満たせていなかった。背を叩いた五回はすべて別々で、乱打ではない。後列の給仕たちは自分の掌を見つめ、次に起きたとき誰か一人が動けるよう、配膳盆の裏へ五本の線を刻み始めた。

公爵は厨房長へ「この娘を厳罰に」と命じかけた。だが老侯爵が杖で床を一度叩く。

「命を救った五発の代金を、まず払え」

その場で祝宴給仕の手順書が書き換えられた。全給仕に窒息時の背部叩打法を教える役として、フロレンへ年間契約書が差し出される。

報酬欄の金額は、侍医見習いの三倍だった。