写真に入らなかった人

雑誌の特集ページを組んでいた千鶴は、資料箱の中から一枚の色褪せた写真を見つけた。

夏祭りの提灯を背に、浴衣姿の女子高生が四人、肩を寄せている。中央で笑っているのが十七歳の千鶴だ。

写真を撮ったのは、写真部の果歩だった。

「私も入ろうか」と誰かが言ったのに、果歩はカメラを構えたまま首を振った。

「撮る人がいなくなるから」

タイマーを使えばよかった。近くの人に頼めばよかった。それなのに当時の千鶴たちは、果歩が写真の外にいることを、彼女の役割だと思ってしまった。

祭りのあと、文化祭の展示をめぐって千鶴と果歩は喧嘩した。人物写真ばかり選ぶ千鶴に、果歩は「写ってるものだけが全部じゃない」と言った。千鶴は「写真なんだから写ってなきゃ意味ない」と返した。

果歩は卒業後、写真をやめた。連絡先は残っているが、二人は何年も言葉を交わしていない。

編集部のスキャナーで写真を大きくすると、右端のりんご飴の屋台に、細い反射があった。金属のケースに、カメラを構える果歩の姿が映っている。顔は半分しか見えない。それでも、片目をつぶる癖も、左手首の青い紐も、確かに彼女だった。

千鶴は息を止めた。

写真の外にいたのではない。見ようとしなかっただけだ。

今号の特集テーマは〈忘れられない夏の一枚〉だった。千鶴は自分たち四人を中心に切り抜いていたレイアウトをやめ、屋台の端まで入るように組み直した。ページの余白は減り、反射した果歩が小さく現れた。

キャプションを書く。

〈撮影・果歩。撮影者も、この夜の中にいる〉

掲載の許可を取るため、千鶴は写真を添えてメッセージを送った。謝罪を長く書きかけ、全部消す。

――勝手に使わないために連絡しました。あなたが写してくれた夏を、今度はあなたごと載せたい。

数時間後、返信が来た。

――顔、半分しか映ってないじゃん。

その後に、笑っている絵文字が一つあった。

千鶴は校了データを保存した。失った時間を写真で埋めることはできない。それでも、これから作るページでは、誰かを役割の外へ置き去りにしない。

モニターの中で、五人目の少女がようやく同じ光を浴びていた。