冬布団を三分の一に

王宮の布庫は、客用の冬布団で塞がっていた。六十組の羽根布団が五十八箱を占領し、春の礼装を入れる場所がない。

「捨てるなら、お前が弁償しろ」

女官長に言われ、美冬は首を横に振った。

捨てる必要はない。空気を抜けばいい。

彼女は仕立屋に、内側へ薄い蝋布を張った大袋を作らせた。口には木製の逆止め弁。鍛冶場から借りたふいごを逆向きにつなぎ、袋へ畳んだ布団を入れる。

「羽根が死ぬわ」

侍女たちが顔をしかめる中、美冬はふいごを踏んだ。

袋が音を立てて縮んだ。人の胴ほど膨らんでいた布団が、板菓子のような厚さになる。弁を閉じて紐を掛けると、手を離しても戻らない。

六十組を圧縮し終えたとき、使った箱は十九個だった。空いた三十九箱分の棚へ、礼装、幕、絨毯まで収まった。

女官長はまだ疑った。

「冬に開けて、ぺしゃんこなら終わりよ」

美冬は一週間前に試しておいた袋を切った。布団はゆっくり空気を吸い、ふくらみ始める。侍女が二度振ると、羽根がほぐれ、元の厚さへ戻った。

重さは変わらない。それでも箱が三分の一になれば、運ぶ人数も減る。侍従四人で抱えていた三箱分を、二人が台車一台で運べた。廊下を塞がず、階段で壁へ擦ることもない。

袋を開いた布団を秤に載せると、羽根の減少は一匁もなかった。圧縮前に付けた厚さの印まで、十分後には同じ位置へ戻る。さらに密閉中は埃も虫も入らず、長く仕舞っていた特有の黴臭さがしなかった。

疑っていた女官長が、誰より先に次の袋へ布団を押し込んだ。

王妃付きの小間使いが頬を押しつける。

「新品みたいに柔らかいです」

そこへ北方使節の到着を告げる鐘が鳴った。予定より二十人多い。以前なら寝具を町で買い集めるところだったが、美冬は圧縮袋を十個切った。五分後、二十組の布団が客間へ運ばれていく。

女官長は空いた棚と、膨らんだ寝具を交互に見た。

王宮執事が袋を一枚持ち上げる。

「軍の冬営でも使えるな。五百枚注文する」

そして美冬へ、布庫の銀鍵を渡した。

「収納用品管理官として、寸法と作り方を王家へ納めてくれ」