勇者という称号を査定します

魔界門が開いた日、勇者レガートは逃げた。

だが王の前では、鎧を血で汚して帰還し、「仲間を救うための撤退だった」と報告した。荷運び役として置き去りにされたネリスだけが、真実を知っていた。

彼女の能力は、武具の出来を調べるだけだと扱われている。

【品質鑑定:対象がその名に求められる働きを、どの等級で満たすか表示する】

王は再びレガートへ聖剣を渡そうとした。今夜までに魔界門を閉じなければ、百万の魔物が出る。

「お待ちください。その勇者を鑑定します」

「人間に品質などあるものか」

嘲笑の中、ネリスはレガート本人ではなく、彼が誇らしげに掲げる「勇者」という称号を対象にした。

等級は最低のF。理由は、危機に際して他者を盾にし、自分だけ逃げたため。

広間が凍った。

さらに表示は続く。称号が求める働きを最も高く満たす者――厩番の少年パウ。

パウは先ほど、暴れる軍馬から子供を庇って腕を折っていた。剣も魔法も使えない。だが魔界門を閉じる聖印が必要としていたのは、強さではなく「恐怖の前で他者を見捨てない者」だった。

レガートは聖剣を抱えて逃げようとした。剣が彼の手を焼き、床へ落ちる。パウが拾うと、錆びた刃から白い炎が立った。

「俺、戦えません」

「門に剣を差すだけでいい。あなたはもう、必要なことをしています」

パウが一歩踏み出すたび、騎士たちが後に続いた。レガートだけが広間に取り残され、王から勇者章を剥ぎ取られる。

魔界門は閉じた。

帰還したパウが、最初にネリスへ頭を下げる。王もまた玉座から降りた。

「称号の真価を、人より正しく見た者よ」

置き去りにされた仲間たちも、魔界門の閉鎖と同時に帰還した。彼らの証言で、レガートが自分の鎧へ魔物の血を塗り、死者の功績を奪ったことまで明らかになる。王は勇者像から彼の名を削らせ、代わりに剣を持たないパウと、真価を示したネリスの名を並べた。称号は生まれや派手な装備ではなく、行動に後から追いつくものになった。

彼女の職業欄で、見習いの三文字が砕けた。

【職業:武具品質鑑定士 → 称号真贋審判官】