十三本の道が一つになる
北境には十三の砦があり、伝令は毎日道に迷っていた。
各砦が残る十二砦すべてへ直接文を送るため、一度の警報で百五十本を超える伝令路が生まれる。同じ文を持つ騎手が別々の道を走り、途中で馬を奪い合う。先月の魔獣警報は最遠砦へ届くまで二日かかった。
王都から来た河東多聞が中央の旧市場を指すと、守備卿は笑った。
「市場で戦を守るつもりか」
多聞は十三砦へ、今後すべての文を旧市場の交換所へ送れと一枚ずつ命令を出した。砦同士へは送らせない。
翌朝、抜き打ち警報の鐘が鳴った。西砦から《黒角獣、三十》の文が一通だけ中央へ走る。交換所で十二枚に写され、待機していた十二方向の騎手へ渡った。
北へ、南へ、谷へ。十三本の道に騎手が一人ずつ散った。
これまでなら西砦から遠い東砦へ湖を半周し、さらに枝道を戻る。今日は西から中央、中央から東という二本だけだ。午後の鐘までに、十三砦の受領旗がすべて上がった。
使った騎手は二十五人から十三人へ減った。最遠到着は二日から半日。道上ですれ違った伝令は零だった。
交換所の机には、十三砦から届いた袋が方角順に並び、到着した騎手は自分の道の袋だけを持って出た。従来のように同じ警報文を各砦で十二回書く必要はない。原文は一通、中央で十二通。書き間違いは百五十六枚中九件から、十二枚中零へ減った。
さらに帰りの騎手は、各砦の兵数と矢数を中央へ持ち帰った。午後には北境全体の不足が一枚の板へ集まり、余っている西砦の矢二千本を東砦へ回す命令まで出せた。道を中央へ集めたことで、警報だけでなく返事も同じ日中に戻ったのだ。
市場跡に積まれていた空の荷籠は、夕方にはすべて次便の方角札を付けて待機していた。増やしたのは建物ではなく、集める場所一つだけだった。
守備卿は受領時刻が同じ列にそろった札を見つめた。直送こそ速いという常識が、十三枚の時刻で否定されている。
そのとき東砦から追加文が届いた。《迎撃配置完了。余剰騎手十二名、増援に回せる》
王国郵政官は旧市場の看板を外し、新しい金文字を掛けた。
《北境中央交換所》
「多聞、十三本の道を束ねる所長職を受けろ。次は王国全土を、この形にする」