同期四人、未読四件

 佐和が〈今日の面談、みんなどうだった?〉と送ったのは、会社を出てすぐだった。

 入社研修で同じ班だった四人のグループチャットだ。配属先は別々でも、月曜の愚痴や昇給日のスタンプだけは途切れなかった。今日は全員、上司との半期面談がある日だった。佐和は「期待している」と言われたあとに、「ただ、もう少し周りを頼って」と付け足された。その意味を一人で考え続けたくなくて、駅のホームでメッセージを送った。

 二十分たっても既読ゼロだった。

 電車を降り、スーパーに寄り、帰宅して鍵を閉めても変わらない。グループの四人が四人とも、自分だけ別の会話をしているような気がした。

 買ってきたコーンスープをマグカップに移す。電子レンジの中で黄色い表面が膨らみ、少しこぼれた。レシートには「お客様感謝デー 五%引」とあり、得した金額は四十三円だった。四十三円ぶん喜べる余裕もなく、佐和は濡れた庫内をティッシュで拭いた。

〈私は可もなく不可もなくでした笑〉

 追加で送れば、質問の重さを薄められるかもしれない。

〈別に急ぎじゃないんだけど〉

 これなら、待っている人に見えない。

 どちらも打って、どちらも消した。

 スープをひと口飲む。熱すぎて舌を引っ込めた。スマホには仕事用アプリの通知が三件、通販の広告が一件。母からは、実家の犬が眠る写真も届いていた。開けば返事をすることが増えそうで、それもまだ未読のままにした。けれど、同期のチャットだけが静かだった。

 佐和は上司の言葉をもう一度思い出した。「周りを頼って」と言われた日に、頼り方まで上手にしようとしている。質問を投げたなら、受け取る時間は相手に任せていいのかもしれない。

 コートを椅子に掛け、ストッキングを脱ぐ。スープが飲める温度になるまで、床に足を伸ばした。チャットを「あとで」のフォルダへ移す。消したわけではなく、閉じただけだ。

 今夜すぐ答えがなくても、面談の結果は変わらない。佐和は冷め始めたスープを両手で包み、四十三円ぶんだけ得をした夕食として飲んだ。