宅配ボックスの底

宅配ボックスの通知が届いてから、四日がたっていた。

中身は分かっている。詰め替え用のシャンプー、トイレットペーパー、送料無料にするため追加した紅茶。どれも必要だから注文したのに、仕事から帰ってエントランスまで取りに戻るのが面倒で、毎晩「明日」にしていた。

木曜の二十二時二十六分、管理会社から保管期限の案内が来た。私は部屋着の上にコートを羽織り、靴下を履かずにスニーカーをつっかけた。

エレベーターの鏡には、髪をひとつに束ねただけの顔が映った。頬にクレンジングの拭き残しがある。足首の出た格好が少し恥ずかしく、誰にも会いたくないと思った瞬間、三階で扉が開き、同じように部屋着の上へダウンを着た女性が、ごみ袋を持って乗ってきた。

二人とも会釈だけした。相手の袋から、柔軟剤の空き容器が透けて見えた。きっと相手にも、畳めない段ボールや、替えるのを忘れた日用品がある。そう思うと、鏡に映る二人は少しだけ普通だった。

宅配ボックスの一番下から出てきた段ボールは、想像より大きかった。トイレットペーパーが場所を取っている。抱えると前が見えず、エレベーターのボタンを肘で押した。

部屋へ戻り、箱を玄関に置いたところで力尽きた。開封するならカッターを出し、中身をしまい、段ボールを畳まなければならない。資源ごみの日は来週だ。

私は鍵でテープを切り、紅茶の箱だけを取り出した。シャンプーも紙も、そのまま段ボールの中に残す。やかんで湯を沸かし、マグカップへティーバッグを沈めた。

湯気には、桃のような香りがした。通販サイトでは「白桃アールグレイ」と書かれていたはずだ。送料無料のために選んだものが、その夜いちばん必要だった。

大きな箱は玄関の半分を占領している。明日の朝も、またいで出勤することになる。

私は箱の側面を壁へ寄せ、そこにバッグを置いた。今夜だけの棚にしてしまえば、散らかりではなく家具に見えた。紅茶を持ってベッドへ戻り、段ボールを畳む仕事は、箱の中に残した。