月曜にならない豆乳

永嶋鞠乃は、日曜日が終わる十五分前から、かぼちゃの豆乳スープを見つめていた。

鍋の表面には薄い膜が張り、かき混ぜると白い湯気が戻った。口に含めば、かぼちゃはほとんど粒を残さず、舌の上に重たく広がる。

本来なら、明日から始まる連載の初回納品をしている時刻だった。午後、依頼元から企画中止のメールが届いた。三か月分の予定が一行で消え、来月の家賃だけが予定表に残った。

誰にも言っていない。フリーの絵描きになって二年、順調だと話したばかりだった。実家へ戻ればと心配されるのも、会社員に戻ればと諭されるのも嫌で、鞠乃は返信欄を閉じたままにしていた。

机のカレンダーには、納品予定を示す青い印が月末まで続いている。消す勇気もなく、存在しない仕事だけが忙しそうに並んでいた。

妹との昼の通話では、締め切りが近いから忙しいと嘘をついた。電話の向こうで喜ばれたあと、鞠乃は作業机へ向かい、白紙の画面を夕方まで開いていた。

夕方、妹が置いていった鍋には「六食分」と書かれた付箋があった。妹は仕事のことを知らない。ただ、締め切り前は料理をしない姉のために作っただけだ。

鞠乃は一杯を器へよそった。食べ終えれば、月曜日になる。月曜になれば、仕事がないことが事実になる気がした。

十一時五十九分。

スプーンを止めても時計は止まらなかった。表示が零時に変わる。部屋は何も変わらず、メールも増えなかった。

鞠乃は残りを食べた。それから鍋を冷蔵庫へ押し込もうとして、手を止めた。

保存容器を五つ並べる。月、火、水、木、金。残ったスープを一食分ずつ取り分け、蓋へ曜日を書いた。金曜日の容器だけ少し少なかったので、今日の器に残していた一口を戻し、同じ高さにそろえた。

予定のない一週間が、五つの容器になった。

鞠乃はパソコンを開いた。新しい仕事が見つかったわけではない。けれど金曜日まで食べる自分を、妹は先に用意していた。ならばその間だけは、終わった人のように振る舞わなくてもいい。

企画中止のメールへ「承知しました」と返し、保存していた持ち込み先の一覧を開く。

冷蔵庫の中で、月曜日の蓋がいちばん手前にあった。