死体を裏返す係
討伐隊が泥人形を倒すたび、葬務士オルセはその死体をうつ伏せに返した。
「戦場で死体遊びか」
炎術師カレブは嘲った。泥人形は魔王樹の根から生まれる雑兵で、いくら倒してもきりがない。戦果盤に示されたオルセの寄与率は0%。攻撃していないのだから当然だと、誰もが思った。
オルセは死体の背へ黒い釘を打ち、次の死体へ向かった。
やがて討伐隊は森の中心へ着いた。魔王樹が枝を震わせると、地面の泥人形がそろって起き上がる――はずだった。
起きたのは、カレブが焼いて灰にした個体だけだった。
うつ伏せにされた死体は動かない。背中の黒い釘が影を地面へ留め、魔王樹から伸びる命令を遮っている。
「なぜ焼いたものだけ戻る!」
「影まで散らしたからです」
オルセは答えながら、蘇った泥人形の間を歩いた。武器を持たない彼を敵は狙わない。倒れた個体を返し、釘を打つ。返し、打つ。そのたび敵の数は確実に減った。
カレブの炎は派手に森を照らしたが、焼かれた泥人形は何度でも灰から立った。逆に、剣士が倒しオルセが処理したものは再び動かない。
ついに魔王樹は、自ら根を引き抜いて逃げようとした。だが周囲には、オルセが並べた無数の背中がある。黒い釘で地面へ縫われた影が網となり、根を絡め取った。
動けなくなった幹へ、討伐隊の攻撃が集中した。
帰還後、カレブは焼却数を誇り、オルセについては「死体整理」とだけ記した。
戦果盤は魔王樹の蘇生命令を追跡した。遮断された命令は、すべて黒い釘の地点で途切れている。討伐を成立させたのは炎の総量ではなく、敵が戻らなかったことだった。
オルセは報酬台の端で、余った釘を箱へ戻した。
カレブの名から首位の光が消え、その箱へ移る。
討伐隊の剣士たちは、オルセが釘を収め終えるまで勝利の杯を取らなかった。倒すだけでは終わらないと知ったのだ。カレブが功績台へ炎の杖を置いても誰も見ず、黒い釘の箱が閉じる音を合図に全員が姿勢を正した。
【再算定完了】
【オルセ・討伐寄与率:0% → 98%】
【隊内順位:最下位 → 首位】
【役職更新:葬務士 → 不死討伐監】