煙が天井へ戻らない鍛冶場

黒鉄街の共同鍛冶場では、炉を三基以上焚けなかった。煙が天井に溜まり、目を開けていられなくなるからだ。注文は山積みなのに、職人は咳で倒れ、納期遅れの罰金だけが増えていた。

元空調設備士のダグナは、追い出された職人の娘だった。

「煙を横へ逃がすから戻ってくるんです。上へ引かせます」

親方たちは、女の図面などと鼻で笑った。

ダグナは炉の上に広い鉄の覆いを吊り、その頂点から細長い煙道を屋根より高く伸ばした。火を入れる前、煙道の口で小さな紙片を離す。紙は吸い込まれ、上へ消えた。高い煙道の中で温められた空気が昇り、下の空気を引く。煙突効果だ。

炉を一基焚く。赤い煙は覆いへ吸われた。

二基、四基、八基。

以前なら壁まで灰色になった数だ。それでも天井の白い石灰線は見えたまま。職人が目をこすることもない。屋外では、煙が屋根のはるか上から一本にまとまって流れていた。

試しに鉄剣八十本を同時に焼き入れした。作業時間は三日から七時間へ縮まり、咳で休む者はゼロ。罰金より先に納品できた剣を見て、武具商たちが工房前で注文札を奪い合った。

かつてダグナの父を解雇した組合長が、煤の付いていない天井を見上げた。

「この街の炉、百六十三基を改修してくれ」

ダグナは父の古い職人札を机に置いた。

ダグナが改修した最初の炉は、父が二十年使った炉だった。彼が解雇された理由も「咳で仕事が遅い」だったが、その咳を作ったのは工房の煙だ。父は覆いの下で深く息を吸い、初めて目を細めずに赤熱した鉄を見た。

作業場の床へ白布を一枚敷き、八基を二時間燃やした。以前なら灰で真っ黒になる布が、端に煤点を三つ残しただけだった。職人一人あたりの休憩は一日六回から一回へ減り、同じ人数で打てる蹄鉄は百二十枚から三百枚になった。注文主の騎士団長は納期札を書き換え、遅延罰金を取り消すどころか、早期納品の銀貨を積んだ。

組合長はその上へ新しい金札を重ねた。

「共同鍛冶場の設備長として、親子二人を正式に雇う」