祭り係は遊べない

夏祭りの日、生徒会は遊べない。

僕らは学校の名前が入った法被を着て、迷子札を配り、ゴミ袋を交換し、落とし物を本部へ届けた。クラスの連中は浴衣で屋台を回り、楽しそうな写真を何枚も送ってきた。

「見せつけだな」

僕がスマートフォンを伏せると、生徒会長は腕時計を見た。

「休憩まで十八分」

祭りでも正確だった。

夕方から働き続け、花火開始の十分前にようやく交代が来た。けれど河原へ向かう道はすでに人で詰まっている。

「間に合わないね」

会長は残念そうに言った。学校では何でも予定どおり進める人なのに、空の予定までは管理できない。

そのとき、クラスの女子が人混みをかき分けて来た。浴衣の袖から、冷たいタオルを二本差し出す。

「差し入れ。働きすぎ」

僕と会長は同時に受け取った。首に巻くと、熱が一気に引いた。

「花火、ここからでも見えるよ」

本部テントの裏、倉庫との隙間に細い空があった。

三人で並ぶには狭い。女子は僕の手首をつかみ、「詰めて」と引いた。反対側から会長も押す。僕は二人の間に挟まれた。

最初の花火は倉庫の屋根に半分隠れた。それでも金色の光が見えた。

「きれい」

女子が言った。

会長も何か言ったが、音に消えた。

「何?」

聞き返すと、会長は首を振った。

花火が終わる前に、迷子の連絡が入った。僕らはまた本部へ戻った。最後の大玉は、泣いている子どもの名前を放送しながら見た。

祭りが終わり、提灯が消え始めたころ、迷子の母親が見つかった。子どもは走って抱きついた。

会長が小さく息を吐いた。

「さっき、何て言ったの」

僕が聞くと、会長は空になった河原を見た。

「これも祭りだね、って」

屋台も花火もほとんど終わっていた。けれど、冷たいタオルの感触と、再会した親子の泣き笑いが残っていた。

帰る途中、女子が僕らの法被の袖を左右からつかんだ。

「来年は三人とも休みを取ること」

会長はすぐに手帳を出した。

「日付が分からない」

「そこから?」

僕らは笑った。

遠くで、片づけ忘れた小さな打ち上げ花火が一発だけ上がった。今度は誰の声も消さなかった。