追放後の生存演習

「目印を置くだけの役立たずは、今日から班を抜けろ」

ディオル・グランは、迷宮演習の門前でケイン・オルブラの肩章をむしった。

直前の能力測定で、ケインに出たのは【支援評価:5】。剣も魔術も目立たず、戦闘記録にはほとんど名が残らない。ケインは抗議せず、腰の小袋だけ持って観覧室へ向かった。中身は色の違う糸、乾いた木片、苦い薬草だった。

演習班は笑いながら迷宮へ入った。

最初の分岐で、ディオルは右を選ぶ。以前なら壁に結ばれていた糸がなく、同じ広間へ戻ったことに誰も気づかない。水場では、木片が浮いていないため底なし沼を見分けられない。休憩では、薬草の匂いがないため眠り茸の胞子を吸い込む。

観測窓の生命灯が次々と濁った。

「罠が増えている!」とディオルは叫んだ。

測定官は首を振った。

「迷宮は変えていない。消えたのは、君たちが無視していた支援だけだ」

ケインは呼び戻された。門をくぐると、床の擦れを見て道を変え、糸を壁へ結び、木片を水へ投げる。倒れかけた班員の鼻先で薬草を折ると、眠り茸の霧が薄れた。

剣を抜く場面はなかった。それでも、濁っていた生命灯が順に澄んでいく。

観測盤には、過去の遠征で班が避けた危険も映し出された。崩れかけた橋の前に置かれた木片、毒水のそばに結ばれた黒い糸、夜営地の周囲へ撒かれた苦い葉。ディオルはそれらを「運がよかった」と報告し、首席章を受け取っていた。

班員たちはようやく、小袋の意味を知った。ケインは命令の前に進路を確かめ、食料が尽きる前に帰路を選び、誰かが弱音を吐く前に休憩場所を作っていた。戦闘を避けたため討伐記録は増えず、記録が増えないこと自体が低評価の理由になっていた。

「強い敵を倒してこそ遠征だ」

ディオルがなおも言い張る。

測定官は濁った生命灯を指した。

「帰れない者は、討伐報告を書けない」

ケインは落ちていた旧い肩章を拾ったが、自分の胸には戻さなかった。班員たちが見える位置へ結び、今度から目印を勝手に捨てないよう告げた。

新式水晶は、敵を倒した者ではなく、誰がいなければ帰還できなかったかを算出した。

【班内生存依存度:94%】

ディオルは門の内側から、観覧室のケインへ返してくれと手を伸ばした。だが肩章は、すでに測定官の手で別の色へ変えられていた。

【遠征科・指揮権更新】

班長:ケイン・オルブラ

経路指示待機:ディオル・グラン