釣り合ったシーソー

孫は公園のシーソーへ祖父を誘った。

祖父は膝が悪く、

「子どもの遊びだ」

と断ったが、孫が一人で待っているので向かいへ座った。

体重が違い、孫の側が浮いたままになる。

祖父が少し前へ、孫が少し後ろへ移り、板がぴたりと水平になった瞬間、二人の魂が入れ替わった。

シーソーが地面へ触れるまで、そのままだった。

祖父の体になった孫は、驚いて足を動かした。

膝に鋭い痛みが走る。

呼吸も浅い。

いつも歩くのが遅い祖父を、わざとだと思っていた。

孫の体に入った祖父は、胸が小刻みに震えているのを感じた。

「何を怖がってる」

孫の声で尋ねる。

「学校」

祖父の口から、孫が答えた。

教室で本を読む番になると、文字が揺れる。

休みたいと言えば母が心配し、祖父は「昔は皆できた」と言う。

だから公園へ逃げていた。

祖父は謝ろうとして、シーソーが少し傾いた。

二人は慌てて体を動かし、水平へ戻した。

入れ替わりを終わらせたくないというより、今の体でしか分からないことを、もう少し確かめたかった。

孫は祖父の痛む手で板を握った。

「病院、行かないの?」

「年だから仕方ない」

「私に学校へ行けって言うのに」

祖父は孫の口で黙った。

孫の心臓は、話すだけで速くなった。

祖父はその速さを「気の持ちよう」とは言えなくなった。

「明日、先生に言う」

祖父が言った。

「何を」

「読めない日があるって」

「おじいちゃんが?」

「一緒に」

孫はうなずいた。

「病院も一緒に行く」

二人で少しずつ足を下げた。

シーソーが地面へ触れ、元の体へ戻る。

翌日、祖父は学校まで付き添った。

孫は保健室で先生と話し、音読を一部免除してもらった。

祖父も整形外科へ行き、杖を使うことになった。

帰りに同じ公園へ寄った。

シーソーには乗らず、隣のベンチへ座る。

「どっちが重かった?」

孫が聞く。

祖父は膝をさすり、

「重さの種類が違った」

と答えた。

釣り合うとは、同じ重さになることではない。

互いの場所を少しずつ動かし、板が水平になる位置を一緒に探すことだった。