不死軍団を良い土に
堆肥師パルメナは、戦勝広場の隅で腐葉土を混ぜていた。
花壇を咲かせても褒められるのは庭師。家畜の糞や枯れ草を運ぶ彼女は、貴族から鼻をつままれた。勇者隊が魔王を倒した後も、死体の処理は「汚れ仕事」として押しつけられた。
彼女の技能は、死を終わらせるためのものだった。
【完全腐熟:死んだもの一山を、毒も呪いも残さず土へ返す。山の量と由来は問わない】
魔王の腹心だった死霊術師は、それを知っていた。だから戦場の死者を一か所へ積ませ、王国の慰霊塚を築くふりをした。
式典の最中、塚が割れた。
兵士、魔物、竜、百年前の王まで、百万の死者が腐った旗を掲げて立ち上がる。勇者の聖剣で斬れば二体に増え、浄化魔法を浴びれば呪いを吸って巨大になる。死霊術師は骨の玉座で笑った。
「死者は私の兵だ。土に触れぬ限り、何度でも蘇る」
逃げ惑う人々の中、パルメナだけが慰霊塚へ近づいた。
死者たちは別々に見えても、同じ塚から起こされ、同じ呪いで束ねられている。一山だった。
彼女は堆肥叉を地面へ一度差した。
百万の亡者が、同時に立ち止まる。
骨から黒い呪いが抜け、鎧から毒が落ち、肉も灰も静かな褐色へ変わった。悲鳴はなかった。死者はようやく戦わされる力を失い、名前の刻まれた白い石だけを残して、柔らかな土へ戻っていく。
骨の玉座も死者から作られていた。死霊術師の足元から崩れ、彼だけが豊かな黒土の山に尻をついた。
朝日が差すと、土の中から無数の青い花が芽吹いた。勇者の剣では終わらなかった戦争が、堆肥師の一仕事で終わった。
パルメナは鼻をつまんでいた貴族へ、花壇用の土袋を一つ渡した。
遺族たちは土の中から家族の名石を拾い、今度こそ一人ずつ墓へ戻した。青い花は兵士と魔物の区別なく咲き、死霊術師の命令だけを拒んで風に揺れる。王は新しい慰霊碑へ勇者の名だけを刻もうとしたが、群衆が最初にパルメナの名を求めた。
《職業が【堆肥師】から【万骸腐熟聖】へ書き換わりました》