二十八の炎

立花邑香は、洋菓子店ポワリエのガラス棚で、数字の「二十八」をかたどった蝋燭を見つけた。正確には、二と八が別々の細い蝋燭で、小さな透明袋の中に並んでいた。

妹は二十七歳で亡くなった。邑香より二つ年下だった。来週、邑香は二十八になる。妹が届かなかった年齢へ先に進むことが、追い越すようで嫌だった。誕生日の予定を聞かれても、残業すると答え、友人から届いた食事の誘いも未読のままにしていた。去年までは妹の分まで生きると言われ、その言葉の重さに笑ってうなずくしかなかった。

妹は生前、この店へよく来ていたらしい。派手なホールケーキではなく、一個だけの焼き菓子を買い、店先のベンチで食べて帰ったと店主から聞いた。病気になってからではない。元気だったころから、一人で自分のために甘いものを選ぶ人だった。

邑香は蝋燭を手に取ったものの、レジへ出せずにいた。二十八を祝うことは、妹の二十七を置き去りにすることではない。頭ではそう分かっている。それでも「おめでとう」と言われた瞬間に笑える自信がなかった。

店主は棚の値札を外し、蝋燭の袋を受け取った。贈り物かとも、ケーキは要らないのかとも尋ねない。薄い紙箱を組み立てると、二と八が離れないよう中央を細い帯で留めた。箱の表には、店に常備している「HAPPY BIRTHDAY」のシールを貼りかけて、手を止めた。

代わりに、白い丸ラベルへ今日の日付を書いた。そして会計票の数量欄へ、数字ではなく「一組」と記した。

邑香はその文字を見て、二と八が妹と自分のように思えたことを、すぐ打ち消した。何でも死者との物語にしなくていい。これはただ、自分が二十八になるための蝋燭だった。

店を出ると、友人からの誘いはまだ未読表示のままだった。邑香は箱を街灯へ透かした。二と八の影が、それぞれ別の向きへ伸びている。

彼女はメッセージを開き、「来週、二十八になる。小さいケーキでいいから一緒に食べて」と送った。妹の年齢を説明する文章は、付け足さなかった。