偽物の星
母校創立記念の同窓会で、倉田美沙は篠ノ井珠良の胸元を見て笑った。
「アクセサリー、何も付けてないの? せっかく女らしくなったのに地味ね」
美沙は星形の大きなペンダントを持ち上げた。海外の人気ブランドで、百万円したという。中学時代、美術室で銀細工をしていた珠良の指を「職人みたいで太い」と笑ったのも美沙だった。
珠良は淡い青の着物を着ていた。化粧は薄いのに目を引き、髪には金属の飾りを一つだけ差している。自分で作ったものだった。
「その星、好きなの?」
「限定品よ。あなたには分からないか」
乾杯前の会場には、宝飾誌の編集長と海外ブランドの日本責任者が来賓として出席していた。市長が壇上から珠良を招く。
「本市出身のジュエリーデザイナー、篠ノ井珠良さんです。昨年、国際新人賞を受賞し、作品が王室コレクションに採用され、最新作は一億円で落札されました」
会場の画面に、珠良のブランドロゴが映る。星を一本の線で囲んだ意匠だった。
美沙の顔から血の気が引く。胸のペンダントにも、よく似た星が付いていた。
海外ブランドの責任者が近づき、丁寧に尋ねた。
「拝見してもよろしいですか」
美沙は誇らしげに差し出しかけたが、責任者は裏面を見て表情を変えた。
「当社製品ではありません。篠ノ井さんの受賞作を無断で模した模造品です」
宝飾誌のカメラが下がった。美沙は慌ててペンダントを握り込む。
「ネットで正規品って……。珠良、似たものを作っただけでしょ?」
珠良は髪飾りを外した。小さな星の裏に、受賞作と同じ刻印がある。
「私が原型を作ったのは三年前。あなたの星が作られたのは去年だよ」
編集長が次号の表紙見本を掲げた。そこには珠良の端正な横顔と、〈二十代で年商十億円を築き、海外に五店舗を構え、予約待ちを抱える日本人デザイナー〉という見出しがあった。
市長が彼女へ記念品制作の委嘱状を渡す。
珠良の本物の星が会場の照明を返した瞬間、美沙の百万円の自慢は、値札のない偽物に変わった。