新しい暗証番号

椿のマンションの入口で、私は三度エラー音を聞いた。

二人で決めた暗証番号が、私に断りなく変えられている。

仕方なく非常用の合鍵を出すと、それも回らなかった。椿は忘れっぽいから、鍵をなくした時のために私が複製したものだ。本人には、心配させるので言っていない。

郵便受けの名札も外されていた。私は毎週、中身を撮影して支払期限を一覧にしていたから、名前がなくても部屋は分かる。玄関前の鉢植えだけが消え、代わりに見慣れない防犯カメラがこちらを向いていた。

インターホンを押すと、画面越しに椿ではない女が出た。最近、仲良しグループへ入った史帆という子だ。私が誘われなくなったのは、この子が椿を囲い込んだからに違いない。

史帆は私の名前を聞かなかった。すでに顔を知っているらしい。椿が悪く話したのだろう。私はカメラへ合鍵を見せ、家族同然だと説明したが、史帆は扉の補助錠をもう一つかける音を聞かせた。

「椿に代わって」

「会わないって伝えたよね」

背後で椿の声がした。私は安心させるため、先月も部屋へ入り、散らかった郵便を開け、怪しい男からの名刺を捨ててあげた。交際相手へ別れのメッセージを送ったのも、椿がまた傷つく前に決断を代わっただけだ。

扉は開かず、代わりに管理人と警察官が来た。管理人は、私が宅配業者のふりをして入館した映像を印刷していた。椿の誕生日を暗証番号にしたのは私なのに、それを使うことまで不法だと言う。

椿が提出した記録には、深夜の入室、日記の撮影、家族への連絡が並んでいた。私の端末に椿のメールと写真が同期されていることも知られていた。

「親友なら、隠すほうがおかしいでしょう」

そう言うと、警察官は合鍵を袋へ入れた。

椿は画面の向こうで、仲良しだった四人全員が私と連絡を断ったと告げた。

史帆が奪ったのではない。三人で相談して、椿を最初に逃がしたらしい。

建物を出る時、管理会社の机に開かれた更新書類が見えた。

そこから覚えた六桁は、まだ一度も使っていない。