最後に残る薬瓶

デルクスは、仲間の荷袋を勝手に並べ替えた。

毒消しは留め金の冷たい側、回復薬は指で割れる封、煙玉は底へ沈まない外袋。暗闇でも、手を入れれば必要な物だけが掴めるようにしていた。

だが荷物を運ぶだけの彼の貢献は2%。隊長ブロムは、整然とした袋を蹴った。

「戦闘中に薬を使うのは本人だ。お前の手柄ではない」

デルクスは追放され、仲間は自分で荷物を詰めた。見た目のよい瓶を上へ、重い物を奥へ。自由になったと喜んだ。

地下水路で毒蛙に囲まれたとき、その自由が牙をむいた。

剣士は毒消しと思って眠り薬を飲み、魔術師は煙玉の代わりに油瓶を割った。火が水面を走り、逃げ道を塞ぐ。ブロムは荷袋をひっくり返したが、似た瓶が泥へ散った。

別の商隊を護衛していたデルクスは、水路の向こうで黒煙を見た。彼は戻る理由などないと歩き続けかけた。けれど自分が結んだ古い留め紐が、煙の中で揺れている。

彼は泥へ飛び込み、手探りで瓶を拾った。匂いも札も確かめない。指先に触れる封の形だけで毒消しを選び、倒れた仲間の口へ流す。最後に残った薬瓶は、彼が非常用として外套の内側へ縫いつけていたものだった。

全員が息を取り戻すと、治癒師は自分の袋を探った。封の向き、紐の長さ、瓶同士が当たらない布。デルクスがいなくなった後、当然だと思っていた工夫がすべて消えていた。戦闘中に迷わなかったのは手際がよかったからではない。迷う余地を、彼が先に片づけていたからだ。

ブロムは当然のように荷袋を差し出した。

「戻せ。前と同じように整えろ」

デルクスは袋を閉じた。

「前と同じなら、また働いていないことにされます」

帰還後、資源腕輪が薬の使用だけでなく、取り出すまでの時間、誤使用を防いだ配置、欠品前の補充を読み込んだ。仲間が考えずに正しい瓶を掴めたのは、偶然ではない。

ブロムが回復薬を要求すると、支給口は閉じた。

《資源貢献・真正算定》

申告値:2% → 真値:95%

働き順位:首位 デルクス

役割更新:荷袋係 → 資源配分長

旧隊長ブロム:物資支給申請者