死亡画面の二十文字
雲母坂ユウは魔王の槍に貫かれ、十七回目の死亡画面を見た。
《YOU DIED》
《復旧エラー:■■■■■■■■■■■■■■■■■外へ》
この世界では、死亡するたびエラー文の伏せ字が一文字だけ解除される。最初は最後の「へ」しか読めなかった。仲間はバグだと笑ったが、ログアウト不能の原因を探すユウには、誰かが残した道標に思えた。
十八回目。ユウは復活すると同時に魔王へ飛び込む。
「勝つ気がないのか!」
仲間の怒号。槍が胸を裂く。
《■■■■■■■■■■■■■■■■の外へ》
十九回目。ユウは防具を外した。魔王は戸惑うように槍を構える。
《■■■■■■■■■■■■■■地図の外へ》
二十回目で全文が出る。そう信じた。だが復活回数は残り一。次に死ねばキャラクターデータが消える。
アイテム欄の《蘇生札》には説明が一行だけある。
《死亡とは、現在の座標から登録を外す処理である》
死は敗北ではなく、座標から外れること。なら「地図の外」は、死んだ先にある。
ユウは仲間へ全部話した。誰も賛成しない。魔王を倒せば正規の出口が開くかもしれない。けれど三年間、魔王は倒されるたび復活し、出口は一度も現れなかった。
「次で消えるぞ」
「地図からは、な」
ユウは最後の槍を受けた。
暗転。死亡画面。伏せ字がすべて剥がれる。
《復旧エラー:ログアウト地点はワールド地図の外へ》
文章として少しおかしい。ユウはそこで気づく。「ログアウト地点は」ではない。「ログアウト、地点はワールド地図の外へ」でもない。句読点が欠けている。
画面の端を掴み、死亡画面そのものを横へ引いた。背後に、描画されていない黒い余白がある。ユウはそこへ足を踏み出した。
次に開いたのは、キャラクター作成前の白いロビーだった。中央にログアウトボタンがある。
仲間たちの画面にも、ユウが引き開けた黒い余白が共有された。魔王は追ってこない。玉座へ座り、初めて武器を下ろした。彼もまた、外へ出る者が世界を壊すと思わされ、出口を守らされていたのかもしれない。
《二十回の座標解除を確認》
《隠し復旧文を完成しました》
《正しい文を表示します――ログアウト地点は、ワールド地図の外》