死刑執行人の針だけが震える

死刑囚ソエンは、首も手足も鉄枠に固定されていた。

執行人ジュラグは二十年、狙いを外したことがない。細い処刑針を延髄へ刺し、一滴の薬で眠らせる。それが彼の誇りだった。

「不死者を名乗った罪人も、これで七人目だ」

ソエンは目だけを動かし、静かに答えた。

「私を処刑するのは、あなたで百一人目です」

嘘だと決めつけ、ジュラグは針を突き出した。

固定された首を外すはずがない。だが針は皮膚へ触れる直前に弧を描き、鉄枠へ刺さった。ソエンの姿勢は変わらず、呼吸も乱れない。

見物していた役人がざわめく。ジュラグは手の震えを隠し、針の欠陥だと言った。

二撃目には、王国で一度しか使えない処刑陣《万棘葬》を起動した。床、壁、天井から光の針が伸び、中心の罪人を同時に貫く。拘束された者に逃げ道はない。

白煙と金属音が処刑室を満たした。

煙が晴れると、ソエンは首を鉄枠へ預けた同じ姿勢だった。無数の針は彼の輪郭を避け、枠の周囲だけに密集している。一本も皮膚へ届いていない。

役人が処刑記録をめくると、百年前から各国で同じ顔の罪人が記載されていた。斬首、火刑、落雷、海沈め。どの欄にも『執行失敗』の朱印だけが残る。ソエンは逃亡したのではない。刑具のほうが彼を殺す役目から逃げ続け、そのたび国家が記録を隠していたのだ。見物役の若い書記は、今日の欄へ初めて「罪人に異常なし、刑罰に異常あり」と書いた。役人たちは消せと命じたが、光の針が記録簿を避けて守った。

異常を理解したジュラグは、自分の右手を見た。震えていたのは恐怖のせいではない。彼がソエンへ刃先を向けるたび、針そのものが逃げようとしていたのだ。

「百回の処刑で、私は百通りの死を覚えました」

ソエンは拘束を引きちぎらず、ただ立ち上がる時を待つ。

「今では、死のほうが私を覚えて避けます」

ジュラグは新しい針を取ろうとした。だが道具箱の刃が一斉に反対側へ転がった。

執行人は初めて、処刑台から一歩退いた。