死者十二名の賛成票

戸隠シュンの胸を団長の剣が貫いた。

《ギルド決議》

死亡したメンバーも、戦闘終了まで一票を保持します。

死者は投票以外の操作を行えません。

「これで反対派は黙る」

団長はシュンを床へ捨て、ギルド資産売却の投票を再開した。現実への帰還門を買うという名目だが、売却先は団長の別アカウント。反対した十二人は、ボス戦の混乱に紛れて一人ずつ殺された。

生存者は団長派八人。反対派の死者十二人。

団長は、死者は投票できないと思っている。

シュンの視界は灰色になり、身体を動かせない。だが中央に投票窓が浮かぶ。

[資産売却に賛成]

[反対]

[ギルドマスター解任を提案]

最後の項目は、生前にはなかった。死亡状態で不正な同士討ちを受けた者だけが提出できる緊急議案らしい。

シュンは解任を押す。

戦場に小さな鐘が鳴る。続いて、倒れた仲間の位置から十一の鐘。

団長の画面へ解任投票が開く。本人も一票を持つが、結果は十二対八。

「死んだ奴に何が決められる!」

団長が死体へ剣を振るう。ダメージは発生しない。投票権も消えない。

ボス《墓守》は戦闘を止め、死者たちの周囲へ復活陣を描く。彼はプレイヤーを殺す敵ではなく、決議が終わるまで死者の権利を保管する審判だった。

団長の役職章が砕ける。売却窓も閉じる。

シュンたちは一人ずつ蘇生し、最初にギルド倉庫ではなく、まだ倒れている仲間を確認した。

《緊急解任議案:可決》

《賛成十二/反対八》

蘇生した反対派の中には、団長へ復讐しようとする者もいた。シュンは剣を下げさせる。

「俺たちの票が生きていたのは、殺し返すためじゃない」

解任後の最初の議案は、死者の投票権を恒久化するかどうかだった。死を利用した不正を防げる一方、戦闘不能者へ重い判断を迫る危険もある。

十二人は即決せず、次の会議まで保留を選ぶ。声を取り戻したからこそ、急いで同じ結論へ揃える必要はなかった。

墓守は投票箱だけを残し、敵性表示を消して墓地へ戻った。

《墓守戦を終了――発言できなくされた者の票を数えるまで、死を同意として扱いません》