灰の畑の最初のパン
焼け跡の農地を買う者などいない。
だから王都を追われたパン職人パルミラは、銅貨十二枚で家と畑と崩れた石窯を手に入れた。かつて盗賊に焼かれた土地で、残っているのは煤けた壁と灰ばかりだった。
初日、彼女は畑に鍬を入れなかった。
まず、石窯を起こす。
崩れた石を一つずつ拾い、煤を払い、半円の形へ組み直す。接着には畑の粘土と藁を練った。王宮厨房では、窯の補修は下働きの仕事だと触らせてもらえなかったが、ここでは誰も止めない。
一度目に煙を入れたときは、側面の隙間から白い筋が漏れた。パルミラは慌てず火を消し、熱で乾き始めた粘土を剥がして練り直した。厨房長なら失敗を怒鳴っただろう。ここには時計も注文票もない。指で亀裂をなぞり、藁を一本増やし、もう一度塗る。二度目の煙は窯口からまっすぐ空へ上がった。その形を見て、彼女はようやく粉袋を開いた。
夕方、最後の楔石を押し込む。
小さな火を入れると、石の奥でぱちりと音がした。熱が逃げず、窯口へ戻ってくる。パルミラは持参した最後の小麦粉を水と塩で練り、薄い円にして滑り込ませた。
そのとき、郡役人が二人やって来た。
「この土地は三十日以内に生産が始まらなければ、領主へ返還される」
「契約書には、そうありますね」
「畑は手つかずだ。明日、没収の札を立てる」
パルミラは窯から目を離さず答えた。
「二ページ目も読んでください」
役人が眉をひそめ、羊皮紙をめくる。
《住居の炉または共同窯に初火を入れた時点で、開拓開始と認める》
窯の中で生地が膨らみ、表面へ焦げ目がついた。焼けた麦と灰の香りが混ざり、捨て地の空気を塗り替える。
パルミラは平たいパンを取り出した。縁を割ると、ぱり、と乾いた音がした。
「本日、日没前。初火と初焼成を確認しましたね」
役人たちは黙って記録板へ印を押した。
パルミラは熱いパンを布に包む。二人が物欲しそうに見たが、最初の一枚を分けるつもりはなかった。
「これは、ここを捨てなかった人の分です」
そう言ってかじった中心は、湯気が出るほど柔らかかった。