白い皿は冷める

蘭は朝食を食べる前に、白い皿の上を整える。

目玉焼きの黄身は中央、トーストは斜め、ミニトマトは三つ。料理の記録を始めた頃は、昨日より焦げなかっただけで嬉しかった。けれど人気の朝食アカウントを見つけてから、木のテーブルもリネンの布もない自分の台所が急にみすぼらしく思えた。

写真を撮り、他人の投稿と並べ、色が暗ければ撮り直す。食べ始める頃には卵の縁が固まり、コーヒーはぬるい。蘭は毎朝、きれいな朝食の写真と、冷めた朝食を手に入れていた。

休日、パンケーキを焼いた。最初の一枚は片側だけ濃く、二枚目はひっくり返すときに折れた。三枚目を焼けば、投稿できる形になる。蘭はフライパンへ生地を流しかけた。

スマートフォンには、保存した朝食写真が並んでいる。どの皿も花や果物で隙間なく飾られ、影まで柔らかい。蘭は自分の折れたパンケーキを見た。割れ目から湯気が出ていた。

撮り直した朝食を食べきれず、捨てたこともあった。焦げた端を切り、黄身の崩れた部分を裏へ回し、画面の外へ追いやったものだけで小さな皿がいっぱいになった。蘭は「丁寧な暮らし」という言葉を見るたび、食べ物を粗末にしている自分をさらに嫌った。それでも翌朝には、また他人の皿を手本に並べ直した。今日は三枚目を焼かないだけで、その輪から少し外れられる気がした。

火を止め、生地の入ったボウルを冷蔵庫へ戻す。

折れた一枚を白い皿にのせ、バターを置いた。形を隠すように果物を並べることも、粉砂糖をかけることもしない。カメラを開く代わりに、スマートフォンを伏せた。

ナイフを入れると、まだ柔らかい生地から甘い匂いが立った。写真に残らないぶん、最初の一口がいつもより早い。

食べ終えた皿には、バターの薄い跡と小さな欠片が残った。蘭はそれも撮らずに流しへ運ぶ。冷蔵庫の生地は明日焼けばいい。明日きれいに焼けるかどうかは、まだ決めなくてよかった。

テーブルの白い皿は空になり、投稿一覧には何も増えなかった。それでも蘭の朝だけは、冷める前にきちんと終わった。