砂鳴り峠の風穴

砂漠の宿場サルマでは、季節風のたび通りが砂で埋まった。井戸の蓋まで覆われ、住民は三日かけて掘り出す。その間に旅人は去り、宿場はますます貧しくなっていた。

帰郷した会計士サハルは、砂を完全に止める高壁ではなく、風穴を並べた低い防壁を峠口に造ると告げた。

「砂は止めれば山になります。穴で風を散らし、指定した空き地へ落とします」

建設費は住民税にせず、宿場へ泊まる隊商一隊につき銀貨一枚を、完成後の百日だけ徴収する。地元の荷運び人や井戸利用には課さない。材料費と残り日数は門前の砂時計板に毎日刻み、百日より早く払い終えたら、その日で徴収を止める。

駱駝を二十頭持つラディが腕を組んだ。

「旅商人が払うなら、住民は何もしないのか」

「金を払うのは、道が埋まることで損をする旅商人です。造るかどうかを決めるのは、ここで暮らす人です。労働は義務にしません」

その言葉の翌朝、宿の女将が水甕を持って現れた。陶工は穴を縁取る焼き輪を無償で出し、子どもは壁の向こうの落砂地へ目印の旗を立てた。利益を独占されず、税がいつ終わるかまで見える。だから手伝う理由を各自が自分で選べた。

壁の位置を決める日は、宿主だけでなく井戸番、露店の女、道端で靴を直す職人まで砂へ棒を立てた。風向きの記録を持つ者はいなかったが、誰の店先にどの高さまで砂が積もるかは皆が知っていた。サハルは意見を一枚の地図へ重ね、最も線の集まった場所へ壁を置いた。会議へ出た時間も作業一刻として数えたため、声の大きさではなく暮らしの記憶が設計に残った。

完成十日後、空が黄土色に変わった。風が壁へ突進し、丸い穴を抜けて幾筋もの細い渦になる。砂は通りではなく、旗で囲った空き地へ柔らかく積もった。

風がやむと、井戸の蓋は見えていた。店々は戸を開け、隊商は出立を取りやめてもう一泊した。

ラディは最初の徴収銀貨を透明な箱へ入れ、その横に札を立てた。

――残り九十日。九十一日目から、この風は無料。

風穴の向こうで赤い旗が揺れ、埋まらなかった通りを駱駝の鈴が進んだ。