聖者の骨で立つ

戦闘が終わると、司教は施療礼拝堂の扉に鍵をかけた。

「聖遺物は明日の凱旋式で将軍に使う。雑兵へ浪費するな」

外では負傷兵が呻いている。腹を裂かれた者、脚を失った者、矢が肺へ入った者。外科士ヘリクは、祭壇下の金箱を見た。

《白骨の奇跡》は一人の致命傷を治すたび、術者の骨を一本、石へ変える。教会はその代価を伏せ、「聖者が無から肉を戻す」と献金を集めていた。実際に石になるのは、名も残らない施術係だった。

ヘリクは鍵を折った。

最初の兵士の胸へ聖者の骨片を当てる。裂けた肺が閉じた。同時に、ヘリクの左小指が白く硬化した。

二人目。右の肋骨が石になる。

三人目。膝蓋骨。

歩くたび、身体の中で陶器が触れ合う音がした。

司教が衛兵を連れて戻る。

「それは教会の財産だ!」

ヘリクは金箱を逆さにした。一本だけと聞かされていた聖者の骨が、床へ山のように転がる。教会は奇跡が尽きたふりをして、金貨を払える者のために隠していたのだ。

兵士たちの視線が司教へ集まる。

ヘリクは次の負傷者へ膝をついた。砕けた顎を戻し、自分の顎骨を石にする。声が重く濁った。

さらに肩、腕、骨盤。治した人数が増えるほど、彼は曲がらなくなった。衛兵が止めようとしても、回復した兵士たちが道を塞いだ。

最後に運ばれてきたのは、戦場へ水を運んでいた少年だった。背骨が折れ、足先はもう冷たい。

残っている柔らかな骨は、ヘリクの背骨だけだった。

「それを使えば、お前は立てなくなる」と司教が言う。

「今まで誰の骨で、あなたは立っていた」

ヘリクは少年の背へ骨片を置いた。

白光が弾ける。少年の脚が震え、爪先が動く。

ヘリクの背中では、椎骨が上から順に石へ変わった。痛みより先に、身体が一本の柱となる。彼は膝を曲げられず、腕も上げられず、祭壇の前に直立したまま止まった。

夜明け、救われた兵士たちは司教を金箱の前へ連れ出した。

少年がヘリクへ礼を言う。返事はない。石になった顎は動かず、白い肋骨は呼吸を許さない。

それでも透明になった皮膚の下で、完全な石の骨格が朝日を反した。

教会が隠していた最後の聖遺物は箱の中ではなく、百人を救った男の身体に立っていた。