追放配信の契約画面

人気配信グループ《閃光六人衆》の生放送で、荒瀬ユナだけ椅子がなかった。

リーダーの鷹取カイは十万人の視聴者へ笑いかける。

「今日は無能な編集係を追放しまーす。ユナ、床に座って謝ったら、給料だけは払ってやるよ」

メンバーが拍手し、ユナの私物を段ボールへ投げ込む。三か月前から、ユナの名前だけ動画のスタッフ欄から消され、失敗は全部彼女のせいにされていた。

「編集データも返してください」

「会社の物だ。おまえに権利はない」

カイは机のタブレットを操作し、追放同意書を表示した。

「ここに署名しろ。『自主的に脱退し、未払いを請求しない』」

「内容を読んだ証明として、先にあなたが署名してください」

挑発されたと思ったカイは笑い、電子署名を入れた。

「ほら。代表の俺が保証した。逃げるなよ」

その瞬間、配信画面の右上に金色の枠が現れた。スポンサー企業の法務担当が、共同契約画面へ参加した印だった。

カイは眉をひそめる。

「なんでスポンサーが」

「その同意書は、配信会社の正式な契約管理システムです。代表者が開けば、関係企業へ自動共有されます」

ユナは床に落ちた小型カメラを拾う。カイが「放送前に壊せ」と蹴ったものだが、スポンサー貸与品で、映像は本社へ直接送信されていた。床へ座らせる相談、私物を漁る場面、未払いを踏み倒す発言まで、放送開始前からすべて残っている。

視聴者コメントが止まり、代わりに画面中央へ文書が表示された。

カイは慌てて配信終了を押す。しかし代表署名によって、契約画面の操作権はスポンサー側へ移っていた。

「ユナが仕組んだ! こいつは前から復讐を」

「私は契約を読んだだけです」

法務担当の声がスピーカーから流れる。

「鷹取カイ氏。出演者への継続的なハラスメント、賃金未払いの強要および虚偽説明を確認しました」

ユナが段ボールを抱えて立つと、金色の通知が十万人の画面へ同時に表示された。

「本時刻をもって、鷹取カイ氏との専属契約を即時解除します」