鉛札の決着

籠城前夜の穀倉で、ティモン・アガトスは鉛の給金札を歯で噛んだ。

柔らかな金属に歯形が残る。表には港市の梟、裏には「十日」と刻まれていた。十日生き残れば銀貨に替える。死ねばただの鉛だ。

穀倉には麦が山のように積まれていたが、傭兵にはまだ一粒も配られていない。明朝の攻撃を退けて初めて炊き出しが始まる。ティモンは二日食べておらず、フィロンは革帯を噛んで空腹を誤魔化していた。二人が争う隊長職は、名誉より先に鍋へ近い席だった。執政官は麦袋にもたれ、二人の空腹を眺めていた。飢えた犬ほど門をよく守ると信じる目だった。

向かいのフィロン・ドラクも、同じ札を首から下げていた。

二人は国を追われた重装兵だった。城門を守る傭兵隊長は一人でよい。執政官は穀倉の扉を閉じ、短剣を二本投げた。

「盾なし、鎧なし。倒れた方の札は勝者へ」

フィロンは上衣を脱がなかった。寒いからだと言った。火のない穀倉で、汗がこめかみを流れていた。

開始の笛が鳴る直前、ティモンは自分の鉛札を投げた。

札はフィロンの胸へ当たり、布の下で小さく金属音を返した。

隠し鎖帷子。

札が当たった位置だけ、布の下で輪が鳴った。胸から腹までではなく、肋骨の下で音が途切れている。借り物の短い鎖だった。フィロンは完全な鎧を買う金すらなく、規則を破るにも半端な装備しか持てなかった。

フィロンは札を払い落とし、同時に踏み込んだ。規則を破ったことを恥じる顔ではない。規則を信じた者を軽蔑する顔だった。

ティモンは胴を狙わなかった。短剣を低く構え、フィロンの前腿へ走らせる。鎖の裾が届かない場所だった。刃が肉へ入り、フィロンの膝が穀粒の上へ落ちた。

それでもフィロンは腕を伸ばし、ティモンの脇腹を浅く裂いた。

二人の血が、同じ麦へ染みた。

「札を捨てたな」

フィロンが息を荒くした。

「十日分だぞ」

「一日目で死ねば、九日分は重りだ」

ティモンは床の札を拾い、今度はフィロンの胸元へ押し込んだ。自分の札は返しても、隊長の座は譲らない。

執政官は隠し鎖を見ても咎めなかった。勝者が見抜いたなら、それでよいという国だった。

穀倉の外で角笛が鳴り、城門の青旗が上がった。